アメリカ村 (美浜町)

和歌山県美浜町「アメリカ村」：カナダ移民の歴史を今に伝える場所

和歌山県日高郡美浜町三尾、通称「アメリカ村」は、日ノ御埼の東麓に位置する漁村です。この地が「アメリカ村」と呼ばれるようになった背景には、明治時代から始まったカナダへの集団移民の歴史があります。

貧困からの脱却：カナダへの移民

三尾は、山が迫り耕地の少ない地形のため、漁業を主な生業としていました。しかし、漁場争いに敗れるなどして生活は困窮。そんな状況を打開するため、1888年（明治21年）に工野儀兵衛をはじめとする若者たちがカナダへと渡りました。

彼らは、現在のブリティッシュコロンビア州スティーブストン付近で、鮭が豊富に獲れるにもかかわらず漁業が盛んではない状況を発見。この情報を故郷に伝え、1889年（明治22年）から三尾からの集団移民が始まったのです。1894年（明治27年）には、漁場をめぐる争いに敗れたことがさらに移民を加速させました。

カナダでの成功と故郷への貢献

1940年（昭和15年）頃には、三尾出身のカナダ移民は2000人を超え、日系移民社会の一大勢力となりました。彼らは漁業や林業に従事し、故郷への送金を行いました。そのおかげで、三尾は富裕な村となり、帰国した人々がカナダ風の家を建てたことから、「アメリカ村」と呼ばれるようになったのです。

戦争の影と苦難の時代

しかし、第二次世界大戦が勃発すると、日系カナダ人は敵性外国人として財産を没収され、強制収容所に収容されるなど、苦難の時代を迎えます。三尾にも400人以上がカナダから引き揚げてきましたが、「アメリカ村」という名前が災いし、警察の監視を受けるなどの困難に見舞われました。また、戦後の食糧難も深刻でした。

再びカナダへ、そして交流の時代へ

1950年（昭和25年）に三尾カナダ連絡会が結成され、その尽力によりカナダへの再渡航が実現。1960年（昭和35年）頃には、ほぼ全ての引揚者がカナダへ帰国しました。

現在、三尾はカナダで働き終えた移民たちの隠居村としての性格から、ルーツの地へと変わり、三尾にゆかりのある日系カナダ人は約5000人いると言われています。近年は高齢化が進み、空き家も目立ちますが、本瓦の家並みは観光資源として注目されています。

カナダミュージアムとトーテムポール

2018年7月には、カナダ移民が建てた古民家を活用したカナダミュージアムがオープン。カフェも併設されており、当時の生活を知ることができます。また、2021年5月には、カナダの彫刻家が制作したトーテムポールがミュージアムのガーデンに設置されました。

今も息づく国際交流

「アメリカ村」という名は、バス停の名前として今も残っています。この地を訪れれば、カナダ移民の歴史と、日系カナダ人との交流の軌跡を感じることができるでしょう。

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