アラウンドビューモニター

日産自動車が開発したアラウンドビューモニターは、車両の周囲状況をドライバーに直感的かつ正確に伝えることを目的とした、先進的な運転支援システムです。特に、車両の死角が増える駐車時や狭い場所での走行において、ドライバーの操作負担を軽減し、安全性の向上に大きく貢献しています。

システムの仕組み

このシステムは、車両の前後および左右ドアミラー下部に配置された合計4台の超広角カメラを利用します。これらのカメラが捉えた周囲の映像は、高性能な画像処理ユニットによってリアルタイムに合成・加工されます。その結果、あたかも車両を真上から見下ろしているかのような「俯瞰映像」が生成され、車内のモニターに表示されます。この俯瞰映像により、車両と周囲の障害物、駐車枠、白線との位置関係を容易に把握できます。視覚的な情報に加えて、必要に応じてブザー音による警告も行われるため、より安全な操作がサポートされます。

開発と進化の歩み

アラウンドビューモニターの開発は2005年にスタートし、日産自動車が当時のザナヴィ（現在のフォルシアクラリオン・エレクトロニクス）、そしてソニーと共同で進められました。このプロジェクトにおいて、ソニーは高精細な130万画素CMOSセンサーと広い視野角を持つ超広角レンズを搭載したカメラの開発を担当。ザナヴィは、複数のカメラ映像を自然な一つの俯瞰映像に変換する高度な画像処理技術や、システム全体の制御を行うコントローラーの開発を担いました。

2007年に実用化されて以降、システムは継続的に改良が重ねられています。2014年には広く一般にその存在が知られるようテレビCMが開始され、2016年からは日産の先進安全技術の体系である「日産インテリジェントモビリティ」の主要な装備の一つとして位置づけられています。

駐車支援における効果

アラウンドビューモニターの導入は、特に視界が限られがちなミニバンなどの大型車において、駐車や狭い道での運転の難易度を大きく下げました。車両周辺の死角をなくすことで、縦列駐車や車庫入れの際の車両の軌道を把握しやすくなり、障害物への接触リスクを低減します。モニターには車両の進行方向を示すガイド線や、タイヤの切れ角に応じた予想進路線なども表示されるため、ドライバーは自信を持ってスムーズに操作を行うことが可能です。

機能の拡充と搭載車種の拡大

初期バージョンから、アラウンドビューモニターは機能面でも進化を遂げています。例えば、スカイラインクロスオーバーに初搭載された改良型では、駐車の手順を画面と音声で案内する「駐車ガイド機能」、車両の前後方向約180度の広範囲を表示できる「フロント/リアワイドビュー機能」などが追加されました。特にリアワイドビュー機能は、当時世界初として注目されました。これらの機能は、その後のモデルチェンジでエルグランドやセレナにも展開されています。

また、2011年にはエルグランドにおいて、車両周囲の移動体（人や自転車など）を検知して警告する「移動物検知機能（MOD: Moving Object Detection）」が世界で初めて導入されました。この機能により、駐車場などでの不意な接触事故の防止に大きく貢献しています。さらに、駐車ガイド機能においては、システムが自動的に駐車枠の白線を認識して目標地点を設定できるようになり、操作の簡便性が向上しています。

搭載車種も、大型車からコンパクトカー、さらには軽自動車へと拡大しました。2012年にはノートに、2013年にはデイズに採用され、幅広いユーザーにその恩恵がもたらされています。車種によっては、表示モニターが自動防眩ルームミラーに内蔵されるなど、工夫が凝らされました。軽自動車においては、日産と三菱自動車の合弁事業であるNMKVを通じて開発された三菱のeKシリーズにも、「マルチアラウンドモニター」として技術が供給されています。

応用と他社システム

アラウンドビューモニターで培われた映像処理技術は、さらなる先進運転支援システムへと応用されています。その代表例が、駐車枠を指定するだけでステアリング操作をシステムが自動で行う「インテリジェントパーキングアシスト」や「プロパイロットパーキング」です。これらのシステムは、アラウンドビューモニターによる周囲認識が基盤となっています。

現在では、日産アライアンス内の三菱自動車（マルチアラウンドモニター）、ルノーサムスン（AVM）だけでなく、他メーカーも独自の名称で類似の全方位カメラシステムを提供しています。トヨタの「パノラミックビューモニターシステム」、ホンダの「マルチビューカメラシステム」、スズキの「全方位モニター」などがその例です。これにより、アラウンドビューモニターがこの分野における先駆的な技術であり、その後の車両安全技術の発展に大きな影響を与えたことが分かります。

まとめ

日産自動車が開発したアラウンドビューモニターは、車両の周囲映像を俯瞰表示することで、駐車や狭い場所での運転を安全かつ容易にする画期的なシステムです。継続的な機能改良や移動物検知機能（MOD）の追加、そして幅広い車種への展開を通じて、多くのドライバーの運転支援に貢献してきました。この技術は、後の自動駐車システムへの発展や、他社における類似システムの開発にも影響を与えており、現代の車両安全技術において重要な位置を占めるシステムと言えるでしょう。

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