アラビアのロレンス

『アラビアのロレンス』

『アラビアのロレンス』は、1962年に公開された、デヴィッド・リーン監督による歴史映画であり、イギリス陸軍将校トマス・エドワード・ロレンスの人生を描いた作品です。この映画は彼の著書『智恵の七柱』に基づいており、アラブ独立闘争を背景とした物語が展開されます。日本では1963年2月に公開されました。

映画の概要

『アラビアのロレンス』の上映時間は207分で、衝撃的な冒頭から感動的なエンディングまで、壮大なスケールで描かれています。物語は、ロレンスが交通事故で命を落とすシーンで始まり、彼がアラビアを離れる悲痛な姿が、映画全体のテーマに深い影響を与えています。特に印象的なシーンには、砂漠に昇る太陽や、夕日を背にラクダに乗って移動するロレンスの姿が含まれ、その美しさは多くの観客に忘れがたい印象を残しています。

当時の大作映画に見られる演出として、冒頭やエンディングで黒画面に音楽が流れるシーンが印象的です。オリジナル版が公開されてから25年以上後の1988年には再編集版が制作され、完全版として227分の上映時間を持っています。監督のデヴィッド・リーンが手掛けた再編集では、オリジナルキャストが再結集して新たなシーンを追加し、デジタルマスタリングされた楽曲も新たに登場しました。

ストーリー展開

物語は1935年のロレンスの葬式から始まります。彼の人生がどのように評価されているか、参列者の視点を通して描かれます。1916年、エジプトに勤務するロレンスがアラビアの独立に向けた工作を命じられ、彼の特技を駆使してアラブの指導者ファイサルと接触を図る場面から、アラビア砂漠の厳しい旅が始まります。

ロレンスは何度も危険を冒しながら仲間たちと共にアカバを奇襲しますが、その過程で悲劇も起こります。彼の部下が仲間を殺してしまい、最終的には自らの手でその命を奪う苦渋の選択を迫られるシーンは、戦争の残酷さと個人の内面の葛藤を浮き彫りにします。この一連の出来事が、ロレンスの心に深い傷を残し、彼の行動を複雑なものへと変えていくのです。

ロレンスはその後、アラブ軍の指揮を執り、オスマン帝国に対する攻撃を続けていきますが、次第に彼の理想が壊れていく様子が描かれます。彼の目的がアラブ人の自由を求めるものであったにもかかわらず、彼らの意見の分裂や対立の中で、ロレンスは孤独を深めていきます。

終局と余韻

映画の後半では、ダマスカスへの進軍とともに、彼のヒーローとしての立場が揺らいでいく過程が描かれます。戦闘による疲弊と失望が重なり、彼はアラビアを去ることを決意。彼が抱えていた疑問やジレンマは、アラブの人々との関係においてますます大きくなっていきます。戦争によって心に刻まれた傷と彼の夢の崩壊が、作品全体に暗い影を落とします。

ロレンスの物語は彼の死によって閉じられますが、その生涯はアラビアの人々やイギリスとの複雑な関係性、また彼自身の内なる葛藤を通じて、観る者に深い考察を促すものであります。この映画は、単なる戦争映画に留まらず、個人の英雄主義と歴史的背景が交差するドラマを描いているのです。

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