アカバ

ヨルダンの紅海に面した港湾都市、アカバ

アカバは、ヨルダン南部に位置する紅海に面した港湾都市です。ヨルダンが唯一海と接する場所であり、戦略的に重要な拠点として古くから栄えてきました。人口は約9万5千人（2008年）で、温暖な気候と美しい海岸線から、リゾート地としても人気を集めています。

地理

アカバはアカバ湾の奥に位置し、紅海を通じてインド洋へと繋がっています。サウジアラビア、イスラエル、エジプトといった国々に近接しており、海上交通の要所として重要な役割を果たしています。年間を通して温暖な気候であり、降水量も少ないため、観光に適した地域です。近年では、ヨルダンとイスラエルの関係改善により、イスラエルからの観光客も増加しています。

西隣にはイスラエルのエイラートという都市があり、アカバと同様に紅海に面したリゾート地として知られています。

歴史

アカバの歴史は古く、紀元前4000年頃から人々が居住していました。アジア、アフリカ、ヨーロッパを結ぶ交易の要衝として栄え、初期の集落は聖書に登場するエラトと呼ばれていました。エドマヤ人やナバテヤ人の交易拠点として発展し、その後、ソロモン王がエジオン・ゲベルという都市を築き、交易の拠点としたとされています。

プトレマイオス朝時代にはベレニケ、ローマ帝国時代にはアエラナまたはアイラと呼ばれ、軍事拠点としての重要性も高まりました。東ローマ帝国の領土となった後、7世紀にイスラム勢力の支配下に入り、ウマイヤ朝、アッバース朝、ファーティマ朝といったイスラム王朝の統治を受けました。

12世紀には十字軍に占領されましたが、1170年にサラーフッディーンによって奪還されました。その後、マムルーク朝の支配を経て、オスマン帝国によって約400年間統治されました。

第一次世界大戦中の1917年、アラブ反乱軍がオスマン帝国からアカバを奪取しました。この反乱を率いたのは、フサイン・イブン・アリーの子ファイサル・イブン・フサインと、イギリスの軍人トーマス・エドワード・ロレンス（アラビアのロレンス）でした。アカバ占領は、ヒジャーズ王国への編入と、エジプトからアラビア半島、そしてパレスチナへの輸送路確保に繋がり、イギリス軍を支援しました。

1924年にヒジャーズ王国が滅亡した後、1925年にアカバはイギリスのトランスヨルダン委任統治領に割譲されました。1965年には、ヨルダンとサウジアラビアの領土交換により、アカバの街は拡大しました。ヨルダンは内陸の砂漠地帯を割譲する代わりに、アカバ南部の海岸線を得ました。

1980年代の湾岸戦争まで、アカバはイラクにとって主要な輸入港であり、その後もイラクへの人道支援物資の陸揚げ港として重要な役割を果たしました。経済制裁下にあったイラクの石油輸出も、アカバ港を通じて行われることが多かったのです。

交通

アカバにはアカバ空港があり、国内外の都市とを結んでいます。また、リン酸塩の貨物輸送を目的としたアカバ鉄道も存在します。

史跡

アカバには、古代の遺跡や歴史的な建造物が数多く残されています。

Ayla: 古代都市アイラの遺跡。
アカバ要塞: マムルーク朝時代に建てられた要塞。
黒バラ: アカバは、世界でも貴重な黒バラが咲く土地としても知られています。王家の花として保護されています。

姉妹都市

ヴァルナ（ブルガリア）

アカバは、その豊かな歴史と美しい自然、そして戦略的な重要性から、ヨルダンにとってかけがえのない都市と言えるでしょう。

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