アラン・ルイス・チャールズ・ブロック(Alan Louis Charles Bullock,
1914年12月13日 -
2004年2月2日)は、
イギリスの著名な歴史家であり、近現代史、特に20世紀の歴史に深い足跡を残しました。
一代貴族のブロック男爵としても知られ、その学術的な功績と社会への貢献は、広く認められています。
若年期と教育
ブロックは、
イングランドの
ウィルトシャー州トロウブリッジで生まれました。父親は庭師であり、ユニテリアン派の牧師でもありました。ブラッドフォード・グラマー・スクールを経て、
オックスフォード大学のウォドム・カレッジに進学し、
西洋古典学と現代史を学びました。1938年に卒業後、ウィンストン・チャーチルの研究助手として、「英語諸国民の歴史」の執筆をサポートしました。第二次世界大戦中は、
英国放送協会(BBC)のヨーロッパ向け番組で活動しました。
学術的キャリアと貢献
戦後、ブロックは
オックスフォード大学に戻り、ニュー・カレッジに所属しました。また、
ケンブリッジ大学のセント・キャサリンズ・カレッジの創立に尽力し、同カレッジの発展のために多大な貢献をしました。彼は、このカレッジが理系と文系の学生が共に学ぶ場となるよう、寄付金集めにも奔走しました。1969年から1973年まで、
オックスフォード大学の初代常勤副総長(実質的な学長)を務めました。
「ヒトラー」研究
ブロックの最も重要な著作の一つに、1952年に出版された「ヒトラー:専制政治の一例」があります。この著作は、
ニュルンベルク裁判の記録に基づいて書かれた、包括的なヒトラーの
伝記として、長年にわたりヒトラー研究の決定版とされてきました。ブロックは、ヒトラーを単なる権力欲に駆られた日和見主義者として描き、彼の行動には一貫した信条や信念がないとしました。この見解は、当時ヒュー・トレヴァー=ローパーとの間で論争を引き起こしましたが、ブロックの解釈は、多くの研究者に影響を与えました。
ブロックは、後の著作でヒトラーを単なる独裁者としてだけでなく、夢想家としても描いています。彼の「わが闘争」に示された理想を追求する人物として捉え、
ホロコーストを含めたその行動の結果を深く考察しました。
その他の著作と業績
ブロックは、「西洋における人道主義の伝統」や、労働党の政治指導者で外相を務めたアーネスト・ベヴィンの
伝記など、多岐にわたる著作を残しました。ベヴィンの
伝記は、単なる評伝としてだけでなく、同時期の政治外交を論じた重要な研究としても位置づけられています。また、「The Harper Dictionary of Modern Thought」の編集者としても知られ、現代思想を網羅する辞典の作成に貢献しました。
1970年代には、教育分野にも貢献し、「A Language for Life」という英語教授法に関する報告書を発表しました。
晩年の著作
晩年には、「ヒトラーとスターリン:同じ時代を生きる」を出版し、ヒトラーとスターリンという2人の独裁者の生涯を比較しました。ブロックは、スターリンが自らの権力をより強固なものにし、ヒトラーのような破滅的な結末を迎えなかったのは、自己の限界を理解していたからだと結論づけました。この著作は、
ナチズムとソヴィエト共産主義の発展を深く理解する上で、重要な貢献とされています。
叙勲と晩年
1972年に
ナイトの称号を授与され、サー・アラン・ブロックとなりました。
1976年には
一代貴族に叙せられ、ブロック男爵の称号を得て貴族院議員となりました。
1976年には、
オープン大学から名誉博士号を授与されています。
ブロックの著作は、今日においても広く読まれており、その知的な洞察力と卓越した歴史分析は、歴史学の研究に大きな影響を与え続けています。
主要な著作
Hitler: a Study in Tyranny (1952) - 『アドルフ・ヒトラー』
The Life and Times of Ernest Bevin (2 vols., 1960-1983)
The Humanist Tradition in the West (1985)
Hitler and Stalin: Parallel Lives (1992) - 『ヒトラーとスターリン――対比列伝』