アリア (1987年の映画)

『アリア』（Aria）は、1987年に制作されたイギリスのオムニバス映画です。名だたる作曲家のオペラのアリアを題材に、10人の監督がそれぞれの才能を結集した、芸術性の高い作品として知られています。

本作の特徴は、複数の監督がそれぞれ独立した短編映画を制作している点にあります。各短編は、ヴェルディ、リュリ、コルンゴルト、ラモー、ワーグナー、プッチーニ、シャルパンティエ、レオンカヴァッロといった、名だたる作曲家のオペラから選りすぐられたアリアを基に構成されています。しかし、アリアの指定を必ずしも厳密に守ったわけではない点が興味深いところです。一部の短編では、指定されたアリアとは異なる楽曲や独自の解釈が取り入れられています。

監督陣には、ニコラス・ローグ、ジャン＝リュック・ゴダール、ロバート・アルトマン、ケン・ラッセル、デレク・ジャーマンといった、当時既に高い評価を得ていた映画監督たちが名を連ねています。それぞれの監督の個性とスタイルが反映された、多様な映像表現を楽しむことができるのも、この映画の魅力です。

例えば、ニコラス・ローグはヴェルディのオペラ『仮面舞踏会』から、チャールズ・スターリッジは同作曲家の『運命の力』からアリアを抽出し、それぞれ独自の解釈で映像化しています。また、ジャン＝リュック・ゴダールはリュリの『アルミードとルノー』を、ロバート・アルトマンはラモーの『アバリス』を、独特の視点で映像化しています。

音楽面では、RCAの音源が主に使用されていますが、『アルミード』と『アバリス』についてはERATOの音源が使われています。これは、当時の音楽業界の状況を反映したものであり、後にこれらの音源は版権の問題などから、サントラ盤の再リリースが困難になったという経緯があります。

『アリア』は、1987年5月7日から19日にかけて開催された第40回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、同年9月15日には第12回トロント国際映画祭でも上映されました。これらの映画祭での上映は、本作が国際的な評価を受けていることを示しています。

出演者には、テレサ・ラッセル、ブリジット・フォンダ、ティルダ・スウィントンなど、著名な俳優たちが名を連ねています。彼らの演技も、この映画の大きな魅力となっています。

『アリア』は、オペラの楽曲と映像表現の融合という実験的な試み、そして名匠たちの個性豊かな演出によって、単なるオペラ映画の枠を超えた、芸術作品として高い評価を受けています。音楽愛好家のみならず、映画ファンにとっても必見の作品と言えるでしょう。オペラを深く知っていなくても十分に楽しめる、奥深い作品です。音楽と映像の調和、そして各監督の個性が光る、忘れ難い映画体験を提供してくれることでしょう。

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