アリアンV

アリアン5ロケットは、欧州宇宙機関（ESA）が中心となり開発・運用された大型のローンチ・ビークルです。前世代のアリアン4ロケットの後継として設計され、静止トランスファ軌道への大型人工衛星の打ち上げや、低軌道への複数衛星同時投入など、多様なミッションに対応できる高い能力を備えていました。このロケットは、欧州が独自の宇宙輸送能力を維持・発展させる上で極めて重要な役割を果たし、多くの商業および科学ミッションに貢献しました。

アリアンロケットシリーズは、その開発と運用において、各打ち上げミッションに連続した「通し番号」を付与して管理する独特の方式を採用しています。この通し番号は、シリーズ全体の歴史を通じて一貫しており、特定の打ち上げを識別するための重要な符号となっています。この通し番号には、さらに接頭辞が付加されており、例えば「アリアンV〇〇」あるいは「アリアンL〇〇」といった形で表記されるのが一般的です。

ただし、この「アリアンV〇〇」や「アリアンL〇〇」といった表記は、打ち上げに用いられたロケットの「型式」を示すものではないという点に注意が必要です。つまり、「アリアン5型ロケットによる打ち上げ」を自動的に意味するものではありません。ここでいう通し番号とそれに付随する接頭辞は、あくまでアリアンロケットシリーズ全体における、純粋な「打ち上げ回数」を示しているのです。

このシステムを理解するための典型的な例として、「アリアンV33号」という打ち上げ記録が挙げられます。この名称からはアリアン5型ロケットによる打ち上げを連想しがちですが、実際にはこのミッションでは、アリアン4型ロケットが使用されました。このように、打ち上げ通し番号と使用されたロケットの型式が必ずしも一致しないという特性は、アリアンロケットシリーズの記録を扱う上で重要な点です。

通し番号に付加される接頭辞自体も、シリーズの歴史の中で一度変更されています。アリアンロケットの開発初期の段階では、通し番号の接頭辞として「L」が採用されていました。しかし、1984年に実施されたアリアン3型ロケットの初号機打ち上げミッション以降、この接頭辞は「V」へと変更されました。興味深いのは、この接頭辞が「L」から「V」へと変更された際も、打ち上げの通し番号自体は途切れることなく、前の番号に続く形で引き継がれたことです。例えば、接頭辞が「V」に変更された最初の打ち上げは、シリーズ全体の通し番号で「V10」と記録されています。これは、アリアンロケットシリーズが、異なる型式のロケットを運用しながらも、打ち上げ活動全体を一連の連続した歴史として捉え、管理してきたことを示しています。

したがって、アリアンロケットに関する資料やニュースで「アリアンV〇〇」といった表記を目にした際には、その番号が必ずしもアリアン5型ロケットによる打ち上げを指しているわけではないことを認識しておく必要があります。特定の型式、特にアリアン5型ロケットによる打ち上げミッションについて正確に知るためには、その通し番号が具体的にどのロケット型式による打ち上げに対応するのかを別途確認することが推奨されます。この通し番号システムは、シリーズ全体の軌跡を追う上で役立ちますが、同時に型式と混同しないよう注意が必要です。アリアン5ロケット自体は、アリアン4からの進化形であり、その通し番号もシリーズ全体の流れの中で位置づけられています。

もう一度検索