アルカリ金属熱電変換機

アルカリ金属熱電変換機（AMTEC）

アルカリ金属熱電変換機（AMTEC: alkali-metal thermal-to-electric converter）は、熱エネルギーを電気に直接変換するデバイスです。その特性から、高効率で機械的稼働部品を必要としないため、特に宇宙機などの特殊な用途での利用が期待されています。この技術は1966年、フォード社に勤務していたJoseph T. KummerおよびNeill Weberによって開発され、「ナトリウム熱エンジン」という名称で数々のアメリカ特許を取得しました。

動作原理

AMTECは金属ナトリウムを用いて動作します。ナトリウムを加熱および冷却すると、熱い側では圧力が増加し、冷たい側では圧力が減少します。この圧力差を利用することで、電解質を介して濃淡電池が形成され、発電が行われます。具体的には、高温側と低温側の間でナトリウム蒸気と液体ナトリウムが分離され、電気エネルギーに変換されます。

劣化と性能

しかし、金属ナトリウムは金属を腐食させる性質があり、これが長期的な劣化要因となります。一方、βアルミナ固体電解質自体は安定していても、電極部分が劣化する可能性があります。AMTECは900Kから1300Kの範囲で熱を加えることで、約15%から40%の変換効率を達成します。具体的には、開放電圧は1.37V、出力密度は1350K（1080℃）時に0.40W/cm²です。近年の実験では、セルの効率が16%に達したと報告されています。

更に、2009年のコンピュータシミュレーションによる予測では、将来的に高電圧の多管モジュールが20%から25%の効率、出力密度1リットルあたり0.2KWに達することが期待されます。さらに、カリウムを作動流体とする場合、効率は28%から31%と算定されています。このように、今後の技術開発によって効率は35%から40%にまで向上する可能性があります。

課題

とはいえ、全体的なシステムでは現在の集電技術とAMTECの変換効率を考慮すると、最大で14 W/kg程度が限界とされており、運転温度を下げることや装置を小型化し、長寿命化することが今後の課題となっています。

用途と未来

AMTECは、特に深宇宙探査などでの利用が計画されています。具体的には、放射性同位体を利用したハイブリッドシステムにおいて、その適用が想定されています。効率が25%以上になることで発電コストが$350/kWにまで低下し、炉や給湯器、キャンピングカーなど多様な用途での普及が期待されています。また、AMTECの応用は油井施設の遠隔測定法やパイプラインの陰極防食にも検討されています。廃熱の活用による熱電併給の導入により、さらなる効率化や発電コストの低減も期待されています。

出典と参考文献

• - Direct Thermal to Electric Conversion Through the Na+ and K+ Solid Electrolytes in AMTEC Devices
• - Ryan, M.; Williams, R.; Fiebig, B.; Kisor, A.; Cortez, R.; Homer, M.; Shields, V. (2000). "Mo/Na, TiOz Mixed Conducting Electrodes for the Alkali Metal Thermal to Electric Converter". Electrochemical Society, 197th Meeting.
• - El-Genk, Mohamed S and Tournier, Jean-Michel P. (2002). "High Energy Utilization, Co-Generation Nuclear Power Plants With Static Energy Conversion". United States.

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