アルケシラーオス

アルケシラーオス

アルケシラーオス（古希: Ἀρκεσίλαος, Arkesilāos）は、古代ギリシアの神話に登場する英雄の一人であり、主にトロイア戦争に関連する物語にその名が見られる。長母音を省略してアルケシラオスとも表記される。彼は、ボイオーティア地方からトロイア遠征に参加したギリシア軍の武将として知られている。

系譜

アルケシラーオスの出自については、いくつかの異なる伝承が伝えられている。一つの説では、彼はアレーイリュコスとテオブーレーという人物の子であるとされる。また別の伝承によると、彼はボイオーティアの祖とされるボイオートスの子イトーノスの子であるアルキリュコスの子であるとされ、さらにプロトエーノールという兄弟がいたともいわれる。彼の親族関係に関しても複数の記録があり、ペーネレオース、レーイトス、クロニオスといった他のボイオーティア出身の将たちとは従兄弟の関係にあったとされるが、従兄弟とされる人物をペーネレオースとクロニオスのみに限定する説も存在する。これらの系譜に関する多様な伝承は、古代の系譜学における複雑さや、異なる地方伝承が併存していた状況を反映しているものと考えられる。

トロイア戦争

トロイア戦争が勃発すると、アルケシラーオスはボイオーティア地方から集められた軍勢を率いて、アガメムノン率いるギリシア連合軍に加わった。彼の率いた軍船の数についても複数の記述が見られる。ホメロスの叙事詩『イリアス』においては、ペーネレオース、レーイトス、プロトエーノール、クロニオスといった他のボイオーティアの主要な指揮官たちと共に、合計50隻の船団を率いてトロイアへと向かった一団に含まれているとされる。一方で、ボイオーティアの軍勢として彼自身が10隻の船を率いたとする伝承も存在する。また、兄弟とされるプロトエーノールと共に、ボイオーティア勢全体の指揮官の任にあたったとする説もある。これらの記述は、彼がボイオーティア部隊において重要な地位にあったことを示している。

最期と埋葬

アルケシラーオスは、トロイアの地で行われた激しい戦いの中でその命を落とした。彼の死は、特に神々の介入が戦況に影響を与えた局面で起こったと伝えられている。ゼウスの意志を受けた光神アポローンが、恐るべき力を持つアイギスの盾を振りかざしてギリシア軍に混乱と恐怖をもたらした際、アルケシラーオスはトロイア軍最強の英雄であるヘクトールによって討ち取られた。彼の死に関する詳細な状況については、いくつかの異なる伝承がある。一説では、メネステウスの部下であるスティキオスと共にヘクトールの手にかかったとされる。また別の伝承では、ボエテスや、兄弟とされるプロトエーノールと共に討たれたとも伝えられている。戦いが終結した後、アルケシラーオスの遺骨は、彼の親族であるレーイトスによって故郷ボイオーティアへと持ち帰られた。そして、レバデイア近郊を流れるヘルキュナ河のほとりに丁重に埋葬されたという。これは、戦死した英雄を故郷に帰還させて祀るという、古代ギリシアにおける重要な葬送儀礼の一環であった。

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