アルタ・カー・アンド・エンジニアリング・カンパニー

アルタ・カー・アンド・エンジニアリング：イギリスが生んだレーシング魂

アルタ・カー・アンド・エンジニアリング・カンパニー（通称：アルタ）は、イギリスを代表するスポーツカーおよびレーシングカーメーカーとして知られています。1929年の創業以来、独自の技術と情熱で数々の名車を世に送り出し、特に1950～1952年にはF1世界選手権に参戦するなど、モータースポーツ史にその名を刻んでいます。本稿では、アルタの輝かしい歴史を詳細に紐解いていきます。

戦前：革新的な技術と高い人気

アルタの創設者であるジェフリー・テイラーは、優れたエンジニアリング技術を持つ人物でした。初期のアルタ車は、アルミニウム製ブロックを用いた1.1リッターエンジンを搭載したスポーツカーでした。このエンジンは、テイラー自身の手による設計で、DOHC方式とシャフトドライブを採用するなど、当時としては先進的な技術を導入していました。自然吸気またはスーパーチャージャー仕様が用意され、最高出力は49～76bhpに達しました。4速ノンシンクロまたはプリセレクタギアボックスが選択でき、2座席または4座席のボディが低床シャシーに搭載されました。

これらの車両は、第二次世界大戦が始まるまでの間に着実に販売され、その卓越した性能は高い評価を獲得しました。最高出力モデルは190km/hの最高速度と7秒台の0-60mph加速を達成するなど、その性能は群を抜いていました。1937年には、フロントサスペンションに独立懸架を採用。これは、クラブレーサーの間で高い人気を博し、限られた予算で上位クラスでの競争を可能にしました。

アルタのもう一つの大きな特徴は、競技専用車両の開発にも力を入れていたことです。1934年には、軽量でシングルシートのヴォワチュレットが完成し、ヒルクライムやスプリントレースで成功を収めました。ERAに比べて低価格であったこともあり、多くのアマチュアレーサーに支持されました。しかし、信頼性の課題は、長距離レースへの参加を困難にしました。この課題は、1937年の改良型ヴォワチュレットで改善され、独立懸架フロントサスペンションが採用されました。

戦争の影が迫る中、テイラーは直列8気筒エンジンを搭載した新型ヴォワチュレットを設計していましたが、戦争開始により生産は中止されました。

戦後：F1への挑戦とエンジンサプライヤーとしての成功

第二次世界大戦後、アルタはイギリスで初めてグランプリカーを製造したメーカーとなりました。戦時中に開発された技術を活かし、1948年にアルタ・GPが誕生しました。しかし、資金不足という課題は、アルタの開発を阻害しました。

アルタ・GPは、戦前設計をベースにしながらも、1.5リッターエンジンで約230bhpの出力を達成しました。改良を重ねたGP2、GP3は、スーパーチャージャーを搭載し、更なる高性能化を図りました。しかしながら、F1での成績は振るわず、資金不足からフォーミュラ2（F2）への転向を余儀なくされました。

F2参戦は成功とは言えませんでしたが、アルタのエンジンは高いポテンシャルを持っていました。アルタ製のエンジンは、HWMやクーパーなどのチームにも供給され、特にHWMは1952年のBRDCインターナショナル・トロフィーで優勝を飾るなど、大きな成功を収めました。アルタエンジンは、最高で約240bhpの出力を発揮し、多くのイギリス製F1マシンを支えました。

アルタの遺産

ジェフリー・テイラーは1966年に亡くなりましたが、アルタの遺産は現在も生き続けています。戦前のスポーツカーやシングルシートカーの一部は現存し、ヒストリックレースで活躍しています。アルタの技術と情熱は、モータースポーツの歴史に大きな足跡を残しました。その挑戦の歴史は、これからも多くの人の心を掴み続けることでしょう。

もう一度検索