アルダス

アルダス（Aldus）は、15世紀の出版人アルドゥス・マヌティウスの名前に由来する、アメリカの出版関連ソフトウェア企業でした。現在ではアドビシステムズ（現アドビ）に買収され、その名前は消滅していますが、DTP（DeskTop Publishing）の黎明期を支えた重要な企業として、その歴史は語り継がれています。

DTPという概念の誕生

アルダスの歴史を語る上で欠かせないのが、DTPという概念の誕生です。1985年、アルダスの社長ポール・ブレイナードは、同社の主要ソフトウェアである「Aldus PageMaker」（後のAdobe PageMaker）のリリースとともに、「DTP」という言葉を生み出しました。それまで専門の組版業者に依頼していた紙媒体のデザイン業務を、個人のコンピュータ上で行うことを可能にしたPageMakerの登場は、出版業界に大きな変革をもたらしました。

主要ソフトウェア

アルダスはPageMaker以外にも、様々なソフトウェアを開発・販売していました。以下にその一部を紹介します。

PageMaker: DTPの概念を生み出した、アルダスの代表的なソフトウェアです。紙媒体のデザイン業務をコンピュータ上で行うことを可能にし、出版業界に革命をもたらしました。初期のバージョンは、Macintosh版のみでしたが、後にWindows版も開発されました。
FreeHand: 元々はアルダスから販売されていたグラフィックソフトウェアです。その後、マクロメディアに販売権が移りました。ドロー系の機能を持ち、イラストやロゴの制作に広く利用されました。
TIFF: PageMakerをWindows向けに移植する際に、アルダスが開発した画像ファイル形式です。現在でも広く利用されている画像フォーマットの一つです。

アルダスからアドビへ

1994年、アルダスはアドビシステムズに買収されました。この買収により、PageMakerはアドビ製品として引き継がれましたが、FreeHandはマクロメディアに販売権が移りました。その後、マクロメディアはAdobeに買収されたため、最終的には両製品ともアドビの傘下となりましたが、PageMakerは7.0を最終バージョンとして開発を終了し、FreeHandもMXa（バージョン11.01）を最終バージョンとして開発・販売が終了しました。

その他のソフトウェア

アルダスは、上記以外にも以下のようなソフトウェアを開発していました。

After Effects: モーショングラフィックス、特殊効果、コンポジットなどの映像編集ソフトウェアです。現在では、アドビ製品として広く利用されています。
Persuasion: Macintosh用のプレゼンテーションソフトウェアです。
SuperPaint: ペイント、ドロー、画像処理の機能を統合したグラフィックソフトウェアです。
Photo Styler: フォトレタッチソフトウェアです。
Table Editor: 表計算ソフトです。
* Fetch: ファイル転送ソフトです。

アルダスの終焉と遺産

2005年、マクロメディア自体がアドビシステムズに買収され、アルダスが開発したすべてのソフトウェアの開発・販売が終了しました。しかし、アルダスがDTPという概念を生み出し、PageMakerやFreeHandといったソフトウェアを通して出版業界に与えた影響は非常に大きく、その功績は今でも語り継がれています。

アルダスは、その名前こそ消えてしまいましたが、DTPの黎明期を支え、今日の出版・デザイン業界の基礎を築いた企業として、その歴史に名を刻んでいます。

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