アルチョム・セルゲーエフ

アルチョム・フョードロヴィチ・セルゲーエフ：スターリンの養子と輝かしい軍歴

アルチョム・フョードロヴィチ・セルゲーエフ(1921年3月5日-2008年1月15日)は、ソ連の歴史において特筆すべき存在です。ヨシフ・スターリンの養子として知られる彼は、ソ連軍で少将の階級にまで昇進し、大祖国戦争やソ連防空軍の発展に貢献しました。その生涯は、激動の時代を生き抜いた一人の男のドラマであり、ソ連の歴史を深く理解する上で貴重な手がかりとなります。

幼少期とスターリンとの生活

1921年、モスクワに生まれたセルゲーエフの父はスターリンの親友だった革命家フョードル・セルゲーエフです。「同志アルチョム」として知られた父は、ドネツク＝クリヴォーイ・ローク・ソビエト共和国の創設に携わりましたが、セルゲーエフがまだ幼かった1921年に鉄道事故で亡くなりました。このため、セルゲーエフはスターリンの養子となり、クレムリンでスターリン一家と共に暮らすことになります。

セルゲーエフの記憶によると、クレムリン内のソ連指導者の居住区は、共同の台所を持つ大規模な共同生活空間でした。党員から一般職員までが近隣に住み、子供たちはスターリンの子や他のソ連指導者の子供たち、そして同数のホームレスの子どもたちと共に孤児院のような環境で育てられました。当時、クレムリン職員の給与は厳しく制限されており、食堂での食事が支給される程度だったといいます。

軍人としてのキャリア

17歳で兵役についたセルゲーエフは、モスクワの砲兵学校を卒業後、赤軍に入隊します。下士官から徐々に階級を上げ、レニングラードの砲兵学校を卒業後は中尉に任官。第1機動小銃師団に配属され、大祖国戦争勃発と同時にドイツ軍との戦闘に身を投じました。

1941年、152ミリ榴弾砲の砲隊長として激戦を経験しますが、捕虜となる苦難も味わいます。パルチザン部隊に加わり、負傷しながらも脱出、その後も幾度となく負傷しながらも第一線で戦い続けました。その間、砲兵連隊の参謀長や連隊長代理などを歴任し、中佐に昇進するなど、卓越した能力を示しました。

戦後と防空軍での活躍

戦後も軍務を続け、ハンガリー駐留を経験した後、モスクワのドゼルジンスキー砲兵アカデミーに入学しました。しかし、アカデミーでの教育は厳しく、セルゲーエフは回顧録でその経験について触れています。卒業後は、様々な部隊で指揮官として活躍し、防空軍の創設にも貢献。第9防空師団長やワルシャワ条約機構防空副総監などを歴任しました。

私生活と晩年

セルゲーエフは、スペイン共産党書記長ドロレス・イバルリの娘と結婚し、子供をもうけました。その後、再婚し、神経外科医の妻と暮らしました。1981年に砲兵少将の階級で退役したセルゲーエフは、2006年には戦争体験を綴った小説集を出版、ロシア作家同盟のメンバーにもなりました。2008年、87歳でこの世を去りました。

まとめ

アルチョム・セルゲーエフの生涯は、スターリンの養子という特殊な境遇から始まり、ソ連軍における輝かしい軍歴、そして晩年の文筆活動まで、非常に波乱に富み、多様な側面を持つものでした。彼の経験は、ソ連の歴史、特に軍事史や社会史を理解する上で貴重な知見を与えてくれます。彼の回顧録は、激動の時代を生きた一人の男の証言として、今後とも多くの人々に読まれ続けるでしょう。

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