ドネツク＝クリヴォーイ・ローク・ソビエト共和国

ドネツク・クリヴォイ・ローク・ソビエト共和国

ドネツク・クリヴォイ・ローク・ソビエト共和国（ДКСР）は、1918年2月18日にボルシェビキ政権によって樹立された、短命なソビエト共和国です。この共和国は、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の一部となることを目指しましたが、国際的な承認を得るには至りませんでした。

領土主張

ДКСРは、南はウクライナ人民共和国との国境から、ドネツ炭田、ハルキウ、エカテリノスラフ県、ヘルソン県の一部、さらにはドン川沿岸地域の一部にまで及ぶ広大な地域を領土として主張しました。当初、首都はハルキウに置かれましたが、後にルハンシクに移されました。

成立と崩壊

わずか1ヶ月後の1918年3月、ДКСРの領土はウクライナ・ソビエト共和国に編入されることが発表されました。その後、ロシア革命の影響が自国に及ぶことを恐れたドイツ・オーストリア・ハンガリーの軍事介入により占領され、1919年2月に崩壊しました。この短期間の存在にもかかわらず、ДКСРは様々な文書で異なる名称で言及され、その政治的立場や地域的アイデンティティに対する様々な解釈が存在することを示しています。

様々な名称

• - ドネツク共和国
• - ドネツク・ソビエト共和国
• - ドネツク・クリヴォイ・ログ（文献によってはクリヴォログスカゴ）流域共和国
• - ドンバス連邦共和国
• - ドネツク連邦
• - 南ドネツク共和国

政権樹立の過程

1918年1月30日（2月12日）、ハルキウで開催された第4回ドネツク・クリヴォイ・ログ盆地労働者代表ソビエト地域大会で、ソビエト国家の建設が宣言されました。この大会では、ボルシェビキのセミョーン・ヴァシリチェンコがドネツ盆地とクリヴォイ・ログの権力組織に関する報告を行い、ソビエト国家の建設は、地方の領土と産業共同体の原則に基づくべきであると主張しました。ヴァシリチェンコは、ドネツク・クリヴォイ・ログ自治共和国の創設、ウクライナからの分離、そしてソビエト・ロシアへの編入を提唱し、その提案は大会代表の大多数によって支持されました。

共和国執行委員会の選出

共和国執行委員会には11人が選出され、その中でボルシェビキが多数を占めました。2月14日には、アルチョム（セルゲーエフ）を議長とする共和国ソヴナルコムが選出されました。

背景

ドネツク石炭盆地とクリヴォイ・ログ鉱区の行政分離構想は、帝政時代に遡る南ロシア鉱業家会議（SSGYUR）の評議会に大きく影響を受けました。産業家たちは、ドネツク＝クリヴォロジェ工業地域が複数の行政単位に分割されていることに不満を抱き、地域の一体性を求めるコンセンサスが形成されていました。この動きは、1917年3月のドネツク特別委員会の設立につながり、地域統合の具体的な動きが始まりました。

ロシア臨時政府と中央ラーダの対立

1917年3月には中央ラーダが結成され、自治を要求しましたが、臨時政府に拒否されました。この対立は、ドネツク地域における政治的緊張を高め、地域が自らの運命を決定しようとする動きを加速させました。

ドネツク・クリヴォイ・ログにおけるソビエト運動

1917年4月、ハリコフでドネツクとクリヴォイ・ログの労働者代議員ソビエトの第1回地方会議が開催され、ハリコフ州、エカテリノスラフ州、クリヴォイ・ログ、ドネツク盆地の行政統合プロセスが開始されました。この会議では、SRのラザール・ゴルボフスキーがドネツク・クリヴォイ・ログ協会の議長に選出されました。しかし、ソビエト運動は、中央ラーダと臨時政府との間で激しい対立を深めることになります。

ボリシェビキの台頭とユゾフカ蜂起

1917年6月にはボリシェヴィキが地域の組織を統合し、市政府との衝突が起こりました。7月にはボリシェヴィキが反逆者として非合法化されましたが、その後地下活動を続けました。1917年秋、ボリシェヴィキはソビエトでの影響力を増し、10月革命を支持する動きが強まりました。11月にはユゾフスキー評議会の執行委員会が再選され、ボリシェヴィキが主導権を握りました。この間、地域は独立した行政・自治地域を目指す動きを強めました。

ドネツク・クリヴォイ・ログ盆地の自決宣言

1917年11月、ドネツク・クリヴォイ・ログ地方の当局は、「ドネツク・クリヴォイ・ログ盆地全体とハリコフをロシア共和国から離脱させる」という公式決議を採択しました。1917年12月には、ソビエト第3回地方議会で評議会の指導権がボリシェヴィキに移りました。

共和国成立への反応

ДКСРの設立については、地元のソビエトの間で意見が分かれました。エカテリノスラフでは市議会が反対し、地区議会が賛成するなど、地域によって対応が異なりました。同時に、ウクライナのソビエト共和国が宣言され、ДКСРとの関係は複雑さを増しました。ソビエト・ロシアの指導者レーニンは、当初、ДКСРの独立宣言に反対しましたが、後に事実上承認したという複数の説があります。しかし、公式には、ウクライナの一部としてドネツク地域を見る見解を支持し、地域をウクライナ・ソビエト共和国に統合する決定が行われました。

ドネツク・クリヴォイ・ローク・ソビエト共和国の範囲

ДКСРの国境は、1918年4月6日付のSNK演説で宣言されました。共和国には、ハリコフ州とエカテリノスラフ州の全域、ケルソン州の一部、タウリダ州の一部、ドン軍管区の隣接する工業地域が含まれていました。

共和国の政府構成

1918年2月14日、共和国政府である人民委員会評議会が発足し、フョードル・セルゲーエフ（アルチョム）が議長に就任しました。しかし、政府は、内部の危機や外部からの圧力に直面し、度々政府のメンバーを変更せざるを得ませんでした。

共和国の改革

ДКСРは経済的根拠に基づいて土地改革や司法改革を実施しました。大企業に対する課税を導入し、貧しい子供たちのために無償教育を導入しました。主要産業の国有化も進められましたが、その政策は短期間で終わりを告げました。

ドイツ・オーストリアによる占領

1918年2月、ウクライナ人民共和国と中央列強が和平条約を締結し、ドイツ・オーストリア軍がウクライナに侵攻しました。これにより、ДКСРの領土は占領され、共和国政府はルガンスクへの移転を余儀なくされました。その後、政府はロシア領内へ避難し、共和国は事実上消滅しました。

ウクライナにおけるソビエト権力の回復

1919年1月、ウクライナ・ソビエト第2師団がハリコフを占領し、ウクライナ臨時労働者・農民政府が移転しました。ソビエト・ウクライナは、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国として独立を宣言しましたが、ドネツク地域における独立傾向は残り、ドネツク独自の軍事統合体を設立しようとする動きもみられました。しかし、レーニンは中央委員会として、ドネツクの分離を認めず、ウクライナ軍に統合するよう指示しました。

国旗について

ДКСРの国旗は、一般的には赤い革命旗が使用されていたとされています。しかし、黒・青・赤の三色旗であったという説も存在します。ただし、この三色旗は、実際には1990年代に作られたドンバス国際連盟の旗であるという指摘もあります。国旗に関する議論は、DKRの象徴に対する様々な解釈を示唆しています。

歴史を踏まえた継続性

2014年、ハリコフの市民フォーラム代表がDKRの後継者を自称し、DNRはDKRの継承を宣言するなど、DKRの歴史は現代にも影響を与えています。ロシアのプロパガンダは、DKRの歴史を利用して、ドネツクとルハンスク地方をウクライナから分離しようとする動きを正当化しています。

結論

ドネツク・クリヴォイ・ローク・ソビエト共和国は、短命ながらも、複雑な政治的状況の中で、地域がどのように自己決定を模索したかを示す重要な事例です。この共和国の歴史は、ソビエト時代から現代に至るまでの、地域的アイデンティティ、民族紛争、そして政治的独立への希求を考える上で、重要な意味を持ち続けています。

参考文献は省略

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