アルツハイマー病

アルツハイマー病 (Alzheimer's Disease)

アルツハイマー病は、主に神経細胞の変性によって引き起こされる進行性の認知症です。全体の認知症患者の60〜70％にこの病名が該当し、年齢とともにリスクが増加する傾向があります。80歳を超えると、その発症率は著しく高まります。発症機構は複雑ですが、遺伝的要因と環境要因が互いに作用することで進行すると考えられています。

症状と進行

アルツハイマー病の初期症状としては、最近の出来事の記憶が困難になる傾向が顕著です。病状が進行するにつれ、言語能力の低下や方位感覚の喪失、意欲の減退、さらには抑うつ症状や行動の異常が現れます。最終段階には、身体機能が著しく損なわれ、最終的には生命を脅かすことにもつながります。

この病気の進行は個人により異なり、一般的に診断後の平均余命は3年から12年とされています。

原因

アルツハイマー病の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの環境的および遺伝的因子が関連していることが知られています。特に、APOE遺伝子の一種であるε4アリルを持つことが、発症リスクを高めるとされています。また、過去の頭部外傷やうつ症状、高血圧なども危険因子として挙げられています。病理学的には、アミロイド斑と呼ばれる異常タンパク質の沈着や、神経原線維の変化が観察されます。

診断

アルツハイマー病の診断は難しいことがあります。初期症状が一般的な老化と似ているため、認知機能の検査や医用画像処理による評価を通じて、他の病因を除外することが重要です。確定診断には脳組織の検査が必要ですが、これは通常死後に行われます。

予防と治療

現時点でアルツハイマー病を予防する方法は確立されていませんが、良好な栄養状態や身体的活動、社交的な関わりが認知機能の低下を予防する可能性があるとされています。2021年には、アミロイドβに対する新薬「アデュカヌマブ」が承認されて以降、症状の進行をある程度抑制する薬がいくつか登場していますが、失われた機能を回復する薬はまだありません。

社会的影響

アルツハイマー病による経済的な負担は非常に大きく、全世界で年間1兆米ドルとも言われています。また、病気による介護が必要となることで、家族や介護者にも心理的・社会的な負担がかかります。

歴史

この病気は1906年にドイツの精神科医アロイス・アルツハイマーによって初めて報告され、彼の名前を取って名付けられました。アルツハイマーの初認用患者であるアウグステ・データーの症歴が、今後の研究に大きな影響を与えました。特に、記憶障害や妄想といったアルツハイマー病の症状は彼女のケースから重要視されるようになりました。

結論

アルツハイマー病は予防が難しく、進行性であるため、早期の認識と介護体制の準備が求められます。病気の理解を深め、研究を進めることが、今後の治療法の確立に寄与することが期待されます。

もう一度検索