アルバ公爵ホセ・アルバレス・デ・トレドの肖像

アルバ公爵ホセ・アルバレス・デ・トレドの肖像

この肖像画はフランシスコ・デ・ゴヤによって1795年ごろに制作された作品です。描かれているのは、第11代ビリャフランカ侯爵ホセ・アルバレス・デ・トレド・オソリオ・イ・グスマンで、彼は第13代アルバ女公爵マリア・デル・ピラール・テレサ・カイエターナ・デ・シルバと結婚してアルバ公爵となりました。現在、この名作はマドリードのプラド美術館に所蔵されています。

人物の背景

ホセ・アルバレス・デ・トレドは1756年、マドリードに生まれました。彼の父は第10代ビリャフランカ侯爵で、母は初代ソルフェリーノ公爵の娘でした。1775年にアルバ女公爵と結婚し、彼は公爵としての地位を手に入れます。彼はカルロス4世の侍従として仕え、1789年には新大陸の大宰相及び首席記録官に選ばれました。また、1791年にはセビリアでの異端審問官に任命されています。公爵は敬虔でありつつも啓蒙主義の価値観を重んじ、乗馬や音楽を嗜むことで知られ、特にハイドンの音楽を愛好していました。

肖像画の特徴

この肖像画では、公爵がフランス流のファッションを身にまとい、オフィスの机に寄りかかりながら立っています。彼は勲章を身につけておらず、乗馬服を着た姿で、乗馬や音楽の愛好者としての一面を浮き彫りにしています。茶色のフロックコートの下に青いドット模様の白いベストを着用し、ストッキングと黒いブーツを履いています。彼の持つ楽譜はハイドンによるもので、机の上には黒い帽子とバイオリンが置かれたまさに音楽家らしい姿です。

公爵の表情は少し憂鬱でありながらも、知的な魅力を持っています。周囲の明るい室内と共に、彼の優雅さと冷静さが見事に表現されています。ゴヤはこの作品において、通常の暗い背景を用いる代わりに、明るい壁面を背後に配置し、奥行き感を演出しています。

楽譜にまつわる考察

公爵が手にしている楽譜の表紙には「ピアノ伴奏付き歌曲集IV」と記されていますが、実際に描かれている楽譜が公爵のために書かれたものかは定かではありません。当時のスペインには音楽出版社が存在せず、楽譜は主にイタリアやオーストリアから輸入されていました。この楽譜の由来については異論もあり、1790年代の出版物には同じ題名の楽曲は見当たらないことが確認されています。

来歴と現在の所蔵

この肖像画は公爵の兄弟、第12代ビリャフランカ侯爵フランシスコ・デ・ボルハ・アルバレス・デ・トレドに受け継がれ、その後も代々相続されました。最終的には1897年に第26代ニエブラ伯爵がこの作品を含む4点の絵画をプラド美術館に遺贈しました。この肖像画は、ゴヤ作品の中でも特に評価が高く、歴史的・文化的にも重要な位置を占めています。

結論

ゴヤの「アルバ公爵ホセ・アルバレス・デ・トレドの肖像」は、当時の文化や人物像を深く掘り下げた作品です。公爵の豊かな背景、肖像画の美しい構成、そしてゴヤの卓越した技術が結集されたこの作品は、我々にとっても記憶に残る名作として語り継がれています。

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