アルビン・カウンター・ギャンビット

アルビン・カウンター・ギャンビット



アルビン・カウンター・ギャンビットは、チェスのオープニングの一つで、広義のクイーンズ・ギャンビット(1. d4 d5 2. c4)から派生した変化です。このオープニングは、黒番のプレイヤーが白のクイーンズ・ギャンビットに対し、2手目に ...e5 とポーンを犠牲にする手で応じることから始まります。基本的な手順は 1. d4 d5 2. c4 e5 です。文献によっては、白がポーンを取り、黒が中央を固めた局面、すなわち 1. d4 d5 2. c4 e5 3. de d4 となった局面を基本形として扱う場合もあります。

このギャンビットは、黒が序盤から積極的にゲームの主導権を握ろうとする意図を示しています。白がポーンを犠牲にしたクイーンズ・ギャンビット・アクセプテッドと同様に、アルビン・カウンター・ギャンビットもまた、しばしば駒の交換が多く、戦術的な読み合いが求められる激しい展開になりやすい特性を持っています。

「アルビン・カウンター・ギャンビット」という名称は、オーストリアのチェスプレイヤー、アドリフ・アルビンに由来しています。このオープニングは、高段者レベルの対局では採用頻度がそれほど高くない傾向にありますが、ロシアのグランドマスターであるアレクサンドル・モロゼヴィッチが実戦で使用し、勝利を収めた例も存在します。

主要な変化



アルビン・カウンター・ギャンビットにおいて最もよく知られている定跡進行の一つは、3手目以降、以下の手順で進行するものです。

3. de d4 4. Nf3 Nc6 5. g3 Bg4 6. Bg2 Qd7 7. 0-0 0-0-0 8. Qa4 Kb8 9. Nbd2 Nge7 10. Nb3 Nc8 11. c5 Be7

この変化は、白がキングサイドをキャスリングで安全にしながらクイーンサイドから攻撃を仕掛け、黒はロングキャスリングをして白の攻撃に備える、またはカウンタープレイを狙うという特徴を持っています。

白番の選択肢



4手目において、白には他の選択肢も存在します。例えば、4. a3 と指す手や 4. e4 と指す手です。

4. a3 と指すと、4. ... Nc6 5. e3 a5 6. Nf3 Bc5 といった進行が見られます。
4. e4 と指す場合は、4. ... Nc6 5. f4 g5 6. f5 Ne5 7. Nf3 といった戦術的な展開が起こり得ます。

一方で、4手目に 4. e3? と指すのは悪手とされており、黒が有利な局面を築きやすくなります。その一例として、4. ... Bb4+ 5. Bd2 de! 6. fe Qh4+ 7. g3 Qe4 8. Qf3 Bxd2+ 9. Nxd2 Qxe5 という手順が考えられます。この変化の途中で、もし白が6. Bxb4? とビショップを取ると、6. ... ef+ 7. Ke2 fg=N+! とポーンがナイトにプロモートしながらチェックをかけ、続く手で白のクイーンを失うことになり、黒の勝ちとなります。

また、白の5手目でも、主要な 5. g3 以外に 5. Nbd2, 5. Bf4, 5. a3, 5. e3 といった手が考慮されます。5. Nbd2 は、1910年のホティミルスキー対マーシャル戦で白番のホティミルスキーが採用した手で、その対局は 5. ... Bg4 6. h3 Bh5 と進行し、最終的に黒のマーシャルが投了するという結果になりました。

白の7手目には、7. 0-0 以外に 7. Nbd2 と指す変化もあり、以下 7. ... 0-0-0 8. h3 Bf5 と進むのが一般的です。

さらに、白の8手目では、8. Qa4 以外に 8. Qb3 と指す手も検討されます。この場合は、8. ... Na5 9. Qd3 c5 10. Ng5 Bf5 11. Qa3 Nc6 のように進行することがあります。

黒番の選択肢



黒番の5手目において、主要な 5. ... Bg4 以外に 5. ... f6 と指す変化も存在します。この場合、6. ef Qxf6 7. Nbd2 Bf5 といった手順が続きます。

また、黒の7手目では、主要な 7. ... 0-0-0 以外に 5. ... h5 と指し、キングサイドのフィアンケットの構造に働きかける手も考えられます。この変化は 6. a3 h4 のように進行することがあります。

まとめ



アルビン・カウンター・ギャンビットは、黒がポーンを犠牲にして序盤から戦術的な混乱を引き起こし、主導権を握ろうとする意欲的なオープニングです。激しい展開を好むプレイヤーにとって魅力的な選択肢となり得ますが、正確な知識と深い戦術的理解が求められます。特に、変化が多い序盤で適切な対応を見つけることが、このオープニングを指しこなす鍵となります。

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