アルピーヌ・A110 (2017年)

アルピーヌ A110

ルノー傘下のスポーツカーブランド、アルピーヌから送り出された現代的な軽量スポーツカー、それがA110です。かつて1960年代にラリーフィールドで輝かしい成績を残し、「ベルリネット」の愛称で親しまれた初代A110の再来として、多くのファンの期待を集めました。

概要と特徴

アルピーヌブランドの市販モデルとしては、1990年代のA610以来、およそ20年ぶりとなる復活作です。2017年、初代A110の生産終了から40年という節目の年に開催されたジュネーブ国際モーターショーで世界初公開されました。

往年の名車である初代A110は、縦置きのリアエンジンレイアウトと2+2のシート配置を採用していましたが、現代版A110では設計思想を大きく変え、エンジンをほぼリアアクスルの直上に横置きに配置するミッドシップレイアウトを採用。これにより、ピュアな2シータークーペとして設計されています。

ボディサイズは全長4,200mm、全幅1,800mm、全高1,250mmとコンパクト。ホイールベースは2,420mmです。最大の特徴はその徹底した軽量設計にあります。フルアルミニウム製のプラットフォームとアンダーボディ構造を採用することで、車重はわずか1,103kgに抑えられています（グレードにより多少異なります）。この軽量ボディと後述のエンジンが生み出すパワーウェイトレシオは4.3kg/PSと、卓越した走行性能を予感させます。

パワートレインには、ルノー・メガーヌR.S.などにも搭載される実績のある1,798cc直列4気筒DOHC直噴ターボエンジンが採用されています。このエンジンは車両の特性に合わせてチューニングされており、組み合わされるトランスミッションはゲトラグ社製の迅速なシフトチェンジを可能にする7速デュアルクラッチトランスミッション（DCT）です。

生産は、かつてアルピーヌのモデルを手掛けたフランス国内のディエップ工場で行われており、伝統と最新技術の融合が図られています。

日本市場における展開と歴史

アルピーヌA110は、2018年に日本市場への導入が開始されました。初期には限定販売の「プルミエールエディション」が導入され、大きな注目を集めました。その後、カタログモデルとして「ピュア」と「リネージ」の2グレードがラインナップされました。「ピュア」は軽量なサベルト製モノコックバケットシートや鍛造ホイールなどを備え、よりスポーティな性格付け。「リネージ」は快適性や洗練された内装に重点を置いたモデルとして登場しました。

導入以降、限定車や特別仕様車が定期的に発表されています。専用ボディカラーや内装、特別装備を与えられたこれらのモデルは、ブランドの世界観を表現する役割も担っています。例えば、ブラックの「ノワール」や深みのあるブルーの「ブルーアビス」、上質なアンバーブラウンレザーを用いた「リネージGT」、鮮やかなイエローの「カラーエディション」などが展開されてきました。

2019年には、より高い走行性能を追求した高性能モデル「A110S」が登場。エンジンの最高出力が向上し、専用のサスペンションやブレーキ、軽量カーボンルーフなどが装備され、サーキット走行も視野に入れたモデルとしてラインナップに追加されました。

車両本体価格については、複数回にわたる改定が実施され、徐々に価格が上昇しています。

2022年には、初のマイナーチェンジを実施。グレード体系が「A110」「A110 GT」「A110 S」の3種類に再編されました。「A110 GT」と「A110 S」はエンジンの最高出力が300PSに引き上げられ、インフォテインメントシステムがApple CarPlayおよびAndroid Autoに対応するなど、機能面での進化も見られます。新しいグレード体系では、「A110」が基本的な素性の良さを活かしたバランス型、「A110 GT」が快適な長距離走行もこなすグランドツーリング志向、「A110 S」が強化されたシャシーとパワーで走りを極めるモデルと、それぞれの性格が明確化されました。

さらに、アルピーヌのモータースポーツ活動から得た知見を投入した究極の高性能モデル「A110 R（ラディカル）」が加わりました。徹底的な軽量化（車重1,090kg）、空力性能の向上（スワンネックリアスポイラー、専用エアロパーツ）、サーキット走行を想定した調整式シャシーなどを採用し、シリーズ最速となる最高速度285km/hを達成しています。カーボン素材が多用され、内装もレーシーな仕上がりとなっています。このモデルには、創業者やル・マンにちなんだ限定モデルも設定されるなど、特別な位置づけがされています。

アルピーヌA110は、その軽量な車体、ミッドシップレイアウト、そして意のままに操れる感覚によって、現代におけるライトウェイトスポーツカーの一つの理想形を示しています。初代の精神を受け継ぎつつ、最新技術で蘇ったこのモデルは、多くの自動車愛好家を魅了し続けています。

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