アルファロメオ・184T

アルファロメオ・184T：緑の疾風と、その影

アルファロメオ・184Tは、1984年と1985年のF1シーズンを戦ったアルファロメオ製フォーミュラ1マシンです。ルイジ・マルミローリと、彼にとって初のF1マシン設計となったマリオ・トレンティーノによって設計されました。

特徴的なベネトンカラーの緑のボディワークに身を包み、1.5リッターV8ターボエンジンを搭載。このエンジンは10700回転で680馬力を発揮する強力なものでした。しかし、その潜在能力にも関わらず、184Tは信頼性の課題に苦しめられました。

1984年シーズン：速さへの片思い

1984年シーズン、184Tは速さを見せつける場面もありましたが、完走率の低さが大きな問題でした。幾度となくエンジントラブルや燃料切れに見舞われ、表彰台に上る機会を逃しました。チームメイトのエディー・チーバーがイタリアGPで燃料切れにより9位に終わった直後、リカルド・パトレーゼが3位に入賞するというドラマチックな展開もありました。このシーズン、184Tは合計11ポイントを獲得するにとどまり、コンストラクターズランキングでは8位に終わりました。220リッターという厳しい燃料制限レギュレーションも、チームの苦戦に拍車をかけました。

1985年シーズン：185Tからの回帰と、終焉

翌1985年、アルファロメオは新型マシン185Tを投入しました。しかし、185Tは期待を裏切り、競争力を欠くことが判明しました。そのため、第8戦イギリスGPからは、1985年のレギュレーションに適合するよう改良された184T、通称「184TB」が再びレースで使用されることになりました。パトレーゼは「184Tのシャシーに185Tの後部を組み合わせた」と語っており、この急造マシンには競争力が不足していました。

マシントラブルによるリタイアが続き、完走したのはヨーロッパGPのみという結果に終わり、このシーズンはゼロポイントに終わりました。この不振により、アルファロメオは悲願のF1ワークス参戦からの撤退を決定せざるを得ませんでした。

パトレーゼはブラバムに移籍しF1キャリアを継続しましたが、チーバーは一時的にシートを失うなど、184Tと185Tはチームにとって苦い思い出として残ることになりました。

アルファロメオ・184T：潜在能力と現実

アルファロメオ・184Tは、高い潜在能力を持ちながら、信頼性の問題に苦しめられたマシンでした。その速さは時折見せるものの、頻繁なリタイアがその可能性を阻みました。184TはアルファロメオのF1挑戦の終わりを象徴するマシンでもあり、F1の歴史の中でも、技術力と、それを支える信頼性の重要性を改めて認識させるマシンと言えるでしょう。エンジニアリングの粋を集めたマシンが、なぜそこまで信頼性を欠いたのか、その原因究明こそが、これからの技術開発においても重要な課題です。ベネトンカラーの緑のボディワークは、多くのF1ファンに記憶されるでしょうが、同時に、その速さと儚さを象徴する存在として、F1の歴史に刻まれています。

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