アルフレッド・アシリング

アルフレッド・アシリング（Alfred Ætheling）は、11世紀初頭のイングランドに生きた人物で、エゼルレッド2世の息子として生まれました。彼の人生は、当時のイングランド王国の政治的混乱に深く関わっています。

生い立ちと亡命

アルフレッドは、エゼルレッド2世と後妻エマ・オブ・ノルマンディーの間に生まれた息子であり、エドワード懺悔王の兄弟にあたります。1013年、デーン人の侵攻によってロンドンが包囲されると、エゼルレッド王一族はノルマンディー公国への亡命を余儀なくされました。その後、エゼルレッド王はイングランドに帰還し王位に復帰するものの、1016年に崩御。

エゼルレッド王の死後、クヌート大王が再びイングランドに侵攻すると、アルフレッド王子とエドワード王子は再びノルマンディーへ亡命し、リシャール2世の宮廷に身を寄せました。リシャール2世は、甥にあたる彼らを支援し、イングランドへの侵攻を計画していたとされています。この亡命生活が、アルフレッドの運命を大きく左右することになります。

イングランド帰還と悲劇

1035年、クヌート大王が死去すると、アングロサクソン王族たちは、ウェセックス家のイングランド支配を再興する機会をうかがいました。アルフレッド王子はノルマンディーからイングランドへ帰還し、サセックスに上陸、ノルマン人の傭兵からなる部隊を率いてロンドンへ向かいました。

しかし、彼の帰還はアングロサクソン貴族ゴドウィンの裏切りによって悲劇的な結末を迎えます。アルフレッドはゴドウィンによって捕えられ、失明させられるという残酷な仕打ちを受けました。この傷がもとで、アルフレッドは間もなく亡くなってしまいます。この事件は、当時のイングランドにおける権力闘争の激しさを物語っています。

アルフレッドの死後の影響

アルフレッドの死後、ハーデクヌーズがイングランド王に即位すると、彼はアルフレッド殺害に関与したとしてゴドウィン伯とリフィング司教を告発し裁判にかけました。リフィング司教は一時的に司教座を剥奪されたものの、ゴドウィン伯は無罪となりました。ゴドウィン伯は、ハロルド兎足王の命令に従ったまでだと主張し、また、ハーデクヌーズ王に豪華な軍船を贈ることで難を逃れたのです。

アルフレッドの兄弟であるエドワード懺悔王も、ゴドウィン伯がアルフレッドの死に関与していたのではないかと疑っていたと伝えられています。1042年、エドワードがイングランド王に即位し、ウェセックス家のイングランド統治は維持されました。しかし、アルフレッドの死はエドワードの貴族に対する不信感を強め、結果的にノルマン人勢力の拡大を招くことになりました。

アルフレッド・アシリングの生涯は、11世紀のイングランドの政治的混乱を象徴するものであり、彼の悲劇的な死は後の歴史に大きな影響を与えることとなりました。

参考文献

イングランドのアングロサクソンのプロソポグラフィのAlfred 54。
Lawson, M. K., "Alfred Ætheling (d. 1036/7)", Oxford Dictionary of National Biography, Oxford University Press, 2004

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