アルブレヒト1世 (バイエルン公)

アルブレヒト1世（1336年7月25日 - 1404年12月13日）は、14世紀の神聖ローマ帝国において、下バイエルン公として重要な役割を担った人物です。彼は、同時にエノー伯、ホラント伯、そしてゼーラント伯という、広大な領地を治める立場にもありました。父は神聖ローマ皇帝ルートヴィヒ4世、母はエノー伯、ホラント伯、ゼーラント伯の相続人であったマルガレーテであり、兄弟にはルートヴィヒ5世、シュテファン2世（異母兄）、ルートヴィヒ6世、ヴィルヘルム1世（同母兄）、そしてオットー5世（同母弟）がいました。

1347年に父ルートヴィヒ4世が亡くなると、1349年に遺領が分割され、アルブレヒト1世は下バイエルンを相続しました。この時、上バイエルンはルートヴィヒ5世、ルートヴィヒ6世、オットー5世が、下バイエルンはシュテファン2世、ヴィルヘルム1世と共に分け合うことになります。1353年には下バイエルンもさらに分割され、シュテファン2世がランツフートを、ヴィルヘルム1世とアルブレヒト1世がシュトラウビングをそれぞれ領有することになりました。

1356年、兄ヴィルヘルム1世が母の死によってエノー、ホラント、ゼーラントを相続しましたが、間もなく発狂してしまいます。そのため、アルブレヒト1世は1358年に摂政として政務を代行し、事実上ネーデルラントの単独統治者となりました。ヴィルヘルム1世は1389年に亡くなるまで幽閉され、名目上の共同統治者として扱われました。

アルブレヒト1世は、自身の子供たちを各王族と縁組させることで、自家の勢力拡大を図りました。特に、長男ヴィルヘルムと三女マルガレーテを、ブルゴーニュ公フィリップ2世（豪胆公）の長女マルグリットと長男ジャン（無怖公）とそれぞれ結婚させた「カンブレー二重結婚」は、後の歴史に大きな影響を与えました。ジャンとマルガレーテ夫妻の間に生まれた外孫フィリップ3世（善良公）が、最終的にエノー、ホラント、ゼーラントを獲得することになります。

しかし、アルブレヒト1世の晩年は、愛人の政治介入や、それに乗じて実権を握ったタラ派（Kabeljauws）と呼ばれる党派の台頭により、混乱を極めます。反対派の釣り針派（Hoeks）は、長男のヴィルヘルムと結んでアルブレヒト1世と対立し、内乱が発生しました（釣り針とタラ戦争）。さらに1397年には、下バイエルン＝シュトラウビングの共同統治者であった次男アルブレヒト2世にも先立たれています。

1404年にアルブレヒト1世が亡くなると、ヴィルヘルムが後を継ぎ、内乱は一旦収束しました。しかし、1417年にヴィルヘルムが一人娘ジャクリーヌを残して亡くなると、リエージュ司教だった三男ヨハンとジャクリーヌが相続を巡って争い、タラ派とフック派の内乱も再燃、フィリップ善良公も介入する事態となりました。この内乱を通して、ヴァロワ＝ブルゴーニュ家がネーデルラントに勢力を拡大していくこととなります。

家族

1353年にブジェク公ルドヴィク1世の娘マルガレーテ（1342年/1343年 - 1386年）と結婚し、7人の子を儲けました。

カタリーナ（1361年 - 1400年） - 1379年にユーリヒ＝ゲルデルン公ヴィルヘルムと結婚。
ヨハンナ（1362年 - 1386年） - 1370年に神聖ローマ皇帝ヴェンツェルと結婚。
マルガレーテ（1363年 - 1423年） - 1385年にブルゴーニュ公ジャン（無怖公）と結婚。
ヴィルヘルム2世（1365年 - 1417年） - 下バイエルン＝シュトラウビング公、エノー伯、ホラント伯、ゼーラント伯。
アルブレヒト2世（1369年 - 1397年） - 下バイエルン＝シュトラウビング公。父に先立って死去。
ヨハンナ・ゾフィー（1373年 - 1410年） - 1390年にオーストリア公アルブレヒト4世と結婚。
* ヨハン3世（1374年 - 1425年） - リエージュ司教、下バイエルン＝シュトラウビング公。

1394年にはクレーフェ＝マルク伯アドルフ3世の娘マルガレーテ（1375年 - 1411年）と再婚しましたが、子はいませんでした。また、数人の庶子がいたとされています。

アルブレヒト1世の生涯は、領土の分割、兄弟間の確執、内乱、そして後継者争いに翻弄されたものでしたが、彼が築いた人脈と、その子孫を通してヴァロワ＝ブルゴーニュ家がネーデルラントに勢力を拡大していく礎となりました。

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