アルベール・ドーザ

アルベール・ドーザ：フランス固有名詞研究の父

アルベール・ドーザ (1877-1955) は、20世紀を代表するフランスの言語学者であり、フランスにおける固有名詞研究の開祖として知られています。彼は、フランス語学のみならず、言語地理学、ロマンス語学といった多岐にわたる分野で重要な業績を残しました。

生涯と学問的キャリア

ドーザはフランス、クルーズ県ゲレに生まれました。ソルボンヌ大学で法学と文学を学び、1899年に法学博士、1906年にはロマンス語研究の方法論とバス＝オーヴェルニュ地方の言語に関する研究で文学博士号を取得しました。その後、高等研究実習院で研究を続け、1910年から文献学の教授を務め、1947年に退官するまでその職にありました。

彼の学問的活動は多方面に及びます。1933年にはフランス語学雑誌『Le Français moderne』を創刊し、1947年には固有名詞学専門誌『Onomastica』（後に『Revue internationale d'onomastique』と改題）を創刊するなど、学術誌の編集にも携わっていました。これらの活動を通じて、フランス語学および固有名詞研究の発展に大きく貢献しました。

ドーザの貢献を称え、フランス固有名詞学会は1971年に「アルベール・ドーザ賞」を創設しました。この賞は、フランス語圏における人名・地名研究で優れた業績を残した研究者に隔年で授与され、ドーザの功績が現在も高く評価されている証となっています。

日本への影響

第二次世界大戦以前の日本では、言語地理学の知識はドーザの研究を通じて紹介されることが多くありました。特に、彼の代表作である『言語地理学』（La géographie linguistique）は、1928年に小林英夫によって紹介され、1938年には松原秀治によって翻訳されました。柳田国男もジュネーヴ大学の講義でドーザの著作に触れたと伝えられており、日本の言語学研究に大きな影響を与えたことがわかります。

主な著作

ドーザは数多くの著作を残しており、その内容はフランス語学、言語地理学、固有名詞研究など多岐にわたります。ここでは、邦訳のあるものを中心に紹介します。

『言語地理学』(La géographie linguistique): 言語地理学の基礎を築いた重要な著作で、日本の言語学研究にも大きな影響を与えました。
『仏蘭西語発達小史』(La langue française, sa vie, son évolution): フランス語の歴史的発展を丁寧に解説したものです。
『フランス語の特質』(Le génie de la langue française): フランス語の独特の性質や特徴を分析したものです。
『フランス語の歩み』(Les étapes de la langue français): フランス語の歴史的変遷を段階的に解説したものです。

この他にも、ラルース社からフランス語の語源辞典、人名辞典、地名辞典などを出版しており、フランス語学研究に多大な貢献をしました。

まとめ

アルベール・ドーザは、フランス語学、特に固有名詞研究において卓越した業績を残した言語学者です。彼の研究は、フランスのみならず、日本を含む世界中の言語学研究に多大な影響を与え、その功績は現在も高く評価されています。彼の著作は、現代の言語学研究においても重要な参考文献として参照され続けており、ドーザの研究は言語学の未来に貢献し続けていると言えるでしょう。

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