アルミランテ・リンチ級駆逐艦

アルミランテ・リンチ級駆逐艦

アルミランテ・リンチ級駆逐艦は、チリ海軍が第一次世界大戦前にイギリスで建造した駆逐艦です。本級は、太平洋戦争の英雄であるパトリシオ・リンチ提督にちなんで命名されました。チリ海軍は長年イギリスを重要な供給元としており、本級も1911年に6隻がJ.サミュエル・ホワイト社に発注されました。

設計と特徴

本級は、当時のイギリス海軍の駆逐艦に比べて大型で、J.サミュエル・ホワイト社独自の設計でした。外見上の特徴は、4本煙突で、1番煙突が細く長い一方、2番から4番煙突は太く短いという特徴的な配置でした。

武装

本級の最大の特徴は、その強力な砲撃力にあります。当時、10.2cm砲を1～2門装備するのが一般的だった時代に、本級は10.2cm砲を6門も搭載していました。艦首甲板に2門、艦橋両舷に各1門、後部甲板に2門が配置され、前方には4門、後方には2門を指向できました。これは、旧式の防護巡洋艦に匹敵する火力でした。魚雷発射管は、53.3cm連装発射管が2基搭載され、左右に4門を指向できました。

イギリス海軍での運用

第一次世界大戦勃発時、チリに引き渡されていなかった4隻はイギリス海軍に購入され、フォークナー級嚮導駆逐艦として運用されました。イギリス海軍はこれらの艦に自国式の武装を施し、12cm単装速射砲2門を艦首と艦尾に、10.2cm砲2門を舷側に装備しました。また、ボウタのみ、単装魚雷発射管を4基装備していました。

戦歴とその後

6隻のうち2隻は第一次世界大戦前にチリ海軍に引き渡され、1945年まで運用されました。一方、イギリス海軍に購入された4隻は、大戦中に嚮導駆逐艦として活躍しました。そのうち1隻はユトランド沖海戦で失われましたが、残りの3隻は1920年にチリ海軍に返還されました。しかし、大戦で機関が消耗し、船体も老朽化していたため、先にチリに引き渡されていた2隻よりも早く、1933年に廃棄されました。

同型艦

アルミランテ・リンチ（Almirante Lynch）: 1912年起工、1913年竣工、1945年除籍。
アルミランテ・コンデル（Almirante Condell）: 1912年起工、1913年竣工、1945年除籍。
アルミランテ・リベロス（Almirante Riveros）: 起工時は「アルミランテ・シンプソン」、1914年イギリス海軍が「ファークナー（HMS Faulknor）」として購入、1920年チリ海軍が再購入、「アルミランテ・リベロス」と命名、1933年除籍。
アルミランテ・ウリーベ（Almirante Uribe）: 起工時は「アルミランテ・ゴニ」、1914年イギリス海軍が「ブルック（HMS Brooke）」として購入、1920年チリ海軍が再購入、「アルミランテ・ウリーベ」と命名、1933年除籍。
アルミランテ・ウィリアムズ（Almirante Williams）: 起工時は「アルミランテ・ウィリアムズ」、1914年イギリス海軍が「ボウタ（HMS Botha）」として購入、1920年チリ海軍が再購入、旧名に復帰、1933年除籍。
ラ・ペルーズ（Almirante Riveros）: 起工時は「アルミランテ・リベロス」、1914年イギリス海軍が「ティペラリー（HMS Tipperary）」として購入、1916年ユトランド沖海戦で撃沈。

参考資料

「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」（Conway）
「Jane's Fighting Ships Of World War I」（Jane）

関連項目

* チリ海軍艦艇一覧

もう一度検索