チリ海軍

チリ海軍：南米を代表する海洋軍事力

チリ海軍（Armada de Chile）は、チリ共和国の海軍組織です。スペインからの独立戦争（1810～1826年）中にその基礎が築かれ、チリ独立後の1818年に正式に創設されました。独立戦争においては、幾度かの海戦で勝利を収め、鹵獲したスペイン艦艇を基に戦力を強化しました。

激動の歴史と主要な海戦

チリ海軍の歴史は、数々の重要な海戦によって彩られています。1830年代後半のペルー・ボリビア連合との連合戦争では、カスマの海戦で連合艦隊を撃破し、チリの勝利に大きく貢献しました。続く1864年のスペインとのチンチャ諸島戦争では、パプードの海戦でスペイン砲艦を拿捕する戦果を挙げました。

しかし、チリ海軍にとって最も重要な時期は、1879年に勃発した太平洋戦争でした。この戦争では、制海権の掌握が勝利の鍵となり、チリ海軍は2隻の装甲艦を主力に、イキケの海戦やアンガモスの海戦などでペルー艦隊と激突しました。これらの海戦でチリ艦隊はペルー艦隊を壊滅させ、制海権を確立し、チリの勝利に大きく貢献しました。イキケの海戦で戦死したアルトゥーロ・プラット中佐は、チリ海軍の英雄として現在も称えられており、5月21日は海軍記念日（Día de las Glorias Navales）として祝われています。アンガモスの海戦で鹵獲されたペルーの装甲艦「ワスカル」は、現在も記念艦として保存されています。

1891年のチリ内戦では、海軍の大部分は議会派側に付き、大統領派を破ることに貢献しました。この内戦においては、議会派が大統領派の駆逐艦を魚雷攻撃により撃沈するという、世界初の魚雷による軍艦撃沈という歴史的事件も起きています。

20世紀には、ブラジルやアルゼンチンとの間で活発な軍拡競争が繰り広げられ、チリ海軍はイギリスから超弩級戦艦を発注するなど、近代化を進めました。第一次世界大戦と第二次世界大戦では、チリは中立を保ちましたが、戦後はアメリカからブルックリン級軽巡洋艦を購入するなど、装備の近代化を継続しました。

組織と主要な基地

チリ海軍は、海軍本部、作戦部隊、海軍管区などから構成されています。作戦部隊には、水上艦部隊、潜水艦部隊、海兵隊、海軍航空隊などが含まれており、多様な作戦に対応できる体制を整えています。

主要な海軍基地は、太平洋沿岸に点在しており、イキケ、イースター島、バルパライソ、タルカウアーノ、プエルトモントなどが挙げられます。また、マゼラン海峡やビーグル海峡にも基地があり、さらにチリが領有権を主張する南極のグリニッジ島にもアルトゥーロ・プラット観測基地を運営しています。

装備：多様な艦艇と航空機

チリ海軍は、多様な艦艇を保有しています。潜水艦としてはスコルペヌ型や209/1400型、フリゲートには、オランダやイギリスから取得した艦艇が多数含まれています。その他、ミサイル艇、哨戒艦、揚陸艦、補給艦など、幅広い艦種を運用しています。

航空機についても、哨戒機（P-3ACH、C-295）、輸送機、ヘリコプターなどを保有し、水上艦艇部隊を支援しています。陸上兵器としては、戦車、装甲車、各種火砲などを装備し、上陸作戦や沿岸防衛などを担う能力を持っています。

チリ海軍の現在

チリ海軍は、南米において重要な海洋軍事力として存在感を示しており、近代的な装備と訓練された人員によって、チリの海洋安全保障に貢献しています。その歴史は、幾多の海戦を戦い抜いた強靭な伝統と、近代化への不断の努力によって築き上げられてきました。現在も、南米地域の安定に重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

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