アルメニア議会銃撃事件

アルメニア議会銃撃事件

アルメニア議会銃撃事件は1999年10月27日に発生したテロ事件で、アルメニア国内では「10月27日」として知られています。この事件は、エレバンの国民議会ビルに5人の襲撃者が侵入し、政治家たちに銃撃を加えたもので、首相や議長を含む8名が命を落としました。

襲撃の詳細

事件は夕方の17時15分頃に起こり、襲撃者は元ダシュナク党の党員であるジャーナリストのナイリ・フナニアンを中心にした5人の男性でした。襲撃者たちは、議場で行われていた質疑応答の最中にAK-47で発砲しました。この銃撃により、32名が負傷し、首相ヴァズゲン・サルキシャンなど8人が命を失いました。襲撃者たちは自らの行為をクーデターと称し、国家の腐敗に対する怒りを表明しました。

サルキシャンが襲撃者の一人に近づかれ、「我々の血を飲まれるのはもうたくさんだ」と言われた際、彼は「全ては君たちの将来のためだ」と冷静に返答しました。しかし、彼に与えられた生存のチャンスはなく、数発の銃弾を受けて命を落としました。

籠城とその後

襲撃直後、議会ビル周辺には数百名の警察と兵士が配備され、救急隊が駆けつけました。襲撃者たちは人質を取って籠城し、自らの要求としてヘリコプターの調達と国営放送での声明を要求しました。アルメニアの大統領ロベルト・コチャリャンは、事態を掌握していると公表し、襲撃者との交渉が開始されました。事件から約18時間後、襲撃者たちは人質を解放し、自ら投降しました。

休葬を求める声の中、サルキシャンらの葬儀は国葬として行われ、国内外から多くの高官が参列しました。

調査と裁判

襲撃者たちは事件の翌日である10月29日に起訴され、事件の背後に潜む真相を探るための調査が続けられました。調査は多くの仮説を検討したものの、決定的な証拠は発見されず、多くの首謀者とされた人々は釈放されました。その後、彼らは2003年に終身刑を言い渡されましたが、事件へのコチャリャンの関与については証拠不十分という理由で立件されませんでした。

政治への影響

この事件により、アルメニアの政治は大きな混乱に陥り、ヴァズゲン・サルキシャンとカレン・デミルチャンの死により、権力のバランスが崩れました。事件は国家の政治、経済、社会に多大な悪影響を与え、コチャリャンの権力が増す要因ともなりました。後任首相と議長が選出されましたが、不安定な政情は続きました。

陰謀論と疑惑

事件後、陰謀論が広がり、背景にはコチャリャンやセルジ・サルキシャンの関与があるのではないかという議論が生まれました。多くの政治家や研究者が、事件の真相について疑問を持ち続け、調査が進まない理由から不信感が募っていきました。初代大統領レヴォン・テル＝ペトロシャンもコチャリャンの関与を強く疑っており、事件の完全な解明が国家にとって重要であると主張しています。

各国の反応

事件が発生した直後、アメリカやイギリス、ロシアなど世界各国から非難の声が上がりました。アルメニア国内では、事件が国家としての立場を脅かす行為として捉えられ、多くの国がアルメニアへの支援を表明しました。

このように、アルメニア議会銃撃事件は単なるテロ行為ではなく、国内外の政治情勢に深い影響を及ぼす出来事となりました。その影響は今なおアルメニアの政治に影を落としていると言えます。

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