アル・ジャーディン

アラン・ジャーディン：ビーチ・ボーイズの影と光を彩るマルチプレイヤー

アラン・ジャーディン。その名は、ザ・ビーチ・ボーイズというカリフォルニアの陽光を思わせるサウンドを代表するグループにおいて、不可欠な存在として知られる。リズムギターを主に担当するミュージシャンとしてだけでなく、リードボーカル、ソングライター、そしてプロデューサーとして、バンドに多大な貢献を果たしてきた彼の半生は、まさに波乱万丈と言えるだろう。

1942年、オハイオ州生まれ。カリフォルニア州ホーソーンへの転居を機に、高校時代からブライアン・ウィルソンと親交を深める。エル・カミーノ大学在学中には、ブライアンと共にバンド活動を始め、ベースを担当。ビーチ・ボーイズのデビュー曲「サーフィン」でもそのベースを弾いた彼は、後に歯科医の道を志してバンドを一時離れる。しかし、後任のメンバーがバンドを去った後、ウィルソン兄弟の父マレーの要請を受けて1963年に再加入、その後のバンドの黄金時代を支える中心メンバーとなる。

60年代には「ヘルプ・ミー・ロンダ」「あの娘にキッス」「コットン・フィールズ」といった名曲でリードボーカルを務め、その歌声は多くのファンを魅了した。70年代には作曲にも携わり、『ペット・サウンズ』収録の「スループ・ジョン・B」のレコーディングをブライアンに提案するなど、クリエイティブな面でも才能を発揮。さらに『M.I.U. アルバム』では、ロン・アルトバックと共にプロデューサーとして作品制作に携わった。

しかし、彼のキャリアは順風満帆ではなかった。カール・ウィルソンの死後、メンバー間の不和からビーチ・ボーイズを離れる時期もあった。特に、ブライアン・ウィルソンとは、ブライアンの自叙伝（実際はブライアンの主治医によって書かれたもの）の内容を巡って関係が悪化した時期もあったが、ブライアンが精神的なコントロールから解放された後、徐々に関係は修復され、2006年には10年ぶりにステージ上で共演を果たすなど、和解の道筋を見出している。

ビーチ・ボーイズ在籍時以外でも、ジャーディンは精力的に音楽活動を続けてきた。2010年には初のソロアルバム『ア・ポストカード・フロム・カリフォルニア』を発表。このアルバムには、ビーチ・ボーイズの未発表曲も収録され、ソロアーティストとしての彼の才能を改めて示した。2011年には、エンドレス・サマー・バンドを率いて初来日公演を行い、日本のファンを熱狂させた。ビーチ・ボーイズの50周年記念プロジェクトにも参加し、ワールドツアーにも参加。現在も、かつてのメンバーであるブロンディ・チャップリンと共にツアーを行い、若かりし頃の情熱を保ちながら音楽活動を続けている。

ジャーディンのトレードマークとなっている白いフェンダー・ストラトキャスターは、ビーチ・ボーイズに再加入して以来40年以上使い続けているという。そのギターと共に奏でる彼の音楽は、数十年間に渡って多くのリスナーの心を掴み続けている。彼の息子であるマット・ジャーディンも、ブライアン・ウィルソンのバンドメンバーとして活動しており、音楽一家としての伝統を受け継いでいる。アラン・ジャーディンという名前は、これからもビーチ・ボーイズの歴史、そしてカリフォルニアの音楽史に深く刻み込まれていくことは間違いないだろう。

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