アレクサンダー・カートライト

アレクサンダー・ジョイ・カートライト・ジュニア：野球のパイオニア

アレクサンダー・ジョイ・カートライト・ジュニア（1820年4月17日 - 1892年7月12日）は、19世紀のアメリカにおいて野球の発展に貢献した重要な人物です。ニューヨーク・ニッカーボッカー・ベースボール・クラブの創設者として知られ、現代野球のルールの基礎を築いたとされています。その功績から「野球の父」とも呼ばれ、1938年にはアメリカ野球殿堂入りを果たしました。

しかし、カートライトの野球に対する貢献の重要性については、様々な議論があります。彼が制定したとされる「ニッカーボッカー・ルール」が、現代野球のルールの元になったという説は、近年では疑問視されています。アブナー・ダブルデイが1838年に野球を発明したという伝説も、後に否定されています。

若年期と仕事

カートライトは、ニューヨークで船長兼商人の父のもとに生まれました。16歳でウォール街の証券会社で働き始め、その後銀行員となりました。また、ボランティアの消防団員としても活動し、余暇には他の消防団員たちとマンハッタンの通りでバットを使った球技を楽しんでいました。1845年に銀行が焼失したため失業し、兄弟とともに本屋を開業しました。

ニッカーボッカー・ベースボール・クラブ

カートライトは、「ゴッサム・ベースボール・クラブ」というクラブに所属していました。当時、「ベースボール」と呼ばれていた球技は、イギリスのラウンダーズに似たものでした。1842年、カートライトはゴッサムから脱退したメンバーとともに、ニッカーボッカー・ベースボール・クラブを設立しました。

1845年、ニッカーボッカー・クラブの委員会は、ゴッサムのルールを基に新しいルールを策定しました。これが「ニッカーボッカー・ルール」と呼ばれるものです。主な改訂点として、ファウルゾーンの導入や、走者にボールを当ててアウトにする行為の禁止などが挙げられます。しかし、現代の研究では、ニッカーボッカー・ルールの独自性は疑問視されています。

野球史研究家のジェフリー・キッテルは、ニッカーボッカー・ルールは、3アウトで1イニングとするルールを除いて、いずれも独自のものではないと結論付けています。MLBの公認歴史研究家ジョン・ソーンは、「野球殿堂に飾られている（カートライトの）銘板の内容は全てが誤りである」と指摘しています。

ニッカーボッカー・ルールによる初の公式試合は、1846年6月19日にニュージャージー州で行われ、ニッカーボッカー・クラブが敗れました。

ハワイでの生活

1849年、カートライトはゴールドラッシュに沸くカリフォルニアへ渡り、その後ハワイ王国に移住しました。ハワイでは、家族を呼び寄せ、ホノルルの消防署長を務めたり、カラカウア王と王妃エマの顧問を務めたりしました。1892年7月12日にホノルルで亡くなり、オアフ墓地に埋葬されました。

死後の評価

カートライトは、1938年にアメリカ野球殿堂入りを果たしました。しかし、彼の野球への貢献については、様々な議論があります。一部の野球史家は、カートライトの役割を誇張していると指摘しています。2004年には、ニッカーボッカー・クラブ初代副会長ウィリアム・ウィートンの新聞インタビューが発見され、カートライトの初期の野球に対する重要性を否定する内容が語られました。

カートライトが建設したものとされていたホノルルのマキキ・フィールドは、「カートライト・フィールド」に改称されました。また、ハワイ州の高校野球の年間チャンピオンには、「カートライト・カップ」が授与されます。

アレクサンダー・ジョイ・カートライト・ジュニアは、野球の歴史において重要な役割を果たした人物であることは間違いありません。彼の功績は、様々な議論があるものの、野球の発展に大きく貢献したことは否定できません。

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