アレクサンダー・ファーマー＝ヘスケス (第3代ヘスケス男爵)

第3代ヘスケス男爵：華麗なる人生と波乱万丈なキャリア

トーマス・アレクサンダー・ファーマー＝ヘスケス、通称アレクサンダー・ヘスケスは、イギリスの貴族社会とモータースポーツの世界で名を馳せた、魅力的で複雑な人物です。1950年生まれの彼は、わずか4歳で第2代ヘスケス男爵位を継承するという、特異な境遇から人生をスタートさせました。

早期の人生とビジネスへの関心

伝統的なパブリックスクールであるアンプルフォース・カレッジを中途退学した後、ヘスケスは学問よりもビジネスの世界に魅力を感じ、16歳で中古車販売会社に就職。その後、サンフランシスコの証券会社や香港の船舶売買会社で経験を積み、若いながらもビジネスセンスを磨いていきました。

政界への進出と保守党での活躍

1971年にイギリスに戻ったヘスケスは、家督を相続し、多様な事業を展開。貴族院議員の資格も得ていましたが、政治活動は比較的遅く、マーガレット・サッチャー首相の暗殺未遂事件がきっかけで政界に本格的に関与し始めました。サッチャー首相の信頼を得て、保守党の要職である貴族院院内幹事を経て、環境庁政務次官、産業大臣を歴任。メージャー内閣でも産業大臣を務め、さらに保守党貴族院院内幹事長という要職にも就きました。しかし、1999年の貴族院改革によって世襲貴族の議席が廃止されたことで、政治家としてのキャリアに終止符が打たれました。その後も保守党会計を務めたものの、2011年にはイギリス独立党への移籍を発表。これは、保守党のEU離脱への消極的な姿勢への反発からでした。

ヘスケス・レーシング：栄光と挫折のF1挑戦

ヘスケスは、幼少期から自動車レースへの情熱を抱いていました。1972年、自身のレーシングチーム「ヘスケス・レーシング」を設立。チームは、ジェームス・ハントという才能豊かなドライバーを発掘し、F1に参戦。1975年にはハントがオランダグランプリで優勝、チームも年間ランキング4位という素晴らしい成績を収めました。ヘスケスの個人資産によって運営されていたチームは、華やかなパドックライフと対照的に、実は資金繰りに苦労しており、1975年末に撤退を余儀なくされました。しかし、ヘスケス・レーシングは、ハントや、チームの設計者であるハーベイ・ポスルスウェイトといった才能ある人材を輩出。ハントは後にF1ワールドチャンピオンに輝き、ポスルスウェイトもF1界で成功を収めました。

多岐にわたる事業と晩年

ヘスケスは、F1チーム経営以外にも、ドン・ペリニヨンの共同経営者になるなど、幅広い事業を手掛けていました。さらに、1977年にはヘスケス・モーターサイクルを設立し、V1000というオートバイを製造。しかし、製品の欠陥により事業は失敗に終わります。また、バブコック社の取締役や、ブリティッシュ・メディテレーニアン・エアウェイズ会長を務めるなど、その活動は多岐にわたりました。

彼の所有していたイーストン・ネストン・ハウスは、歴史ある邸宅であり、ヘスケス・レーシングのワークショップとしても使用されていました。この馬小屋は、かつて彼の祖父が自動車製作に使用していた場所であり、ヘスケス・レーシング、そしてヘスケス・モーターサイクル、その後の後継企業にも使用されました。2000年代半ば、経済的な問題によりこの土地は売却されましたが、2013年の映画『ラッシュ/プライドと友情|ラッシュ_プライドと友情』では撮影場所として使用されました。

人物像とエピソード

ヘスケスは、愛国心と独特の経営スタイルで知られていました。チームカラーをイギリス国旗をモチーフにしたものにするなど、愛国心を強く示していましたが、一方で、スポンサー交渉における自己中心的かつ自信過剰な態度が、スポンサー獲得を阻害した一面もありました。

晩年まで精力的に活動したヘスケスは、多大な資産と才能を持ちながら、時に奔放で自己中心的とも評される行動をとった、複雑で魅力的な人物として記憶されています。彼の生き様は、成功と失敗、そして華麗さと破天荒さを兼ね備えた、まさに波乱万丈な人生の物語と言えます。

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