アレクサンドル・ゲディケ

アレクサンドル・フョードロヴィチ・ゲディケ

アレクサンドル・フョードロヴィチ・ゲディケ（Алекса́ндр Фёдорович Гёдике/Ге́дике; Alexander Goedicke, 1877年3月4日 - 1957年7月9日）は、20世紀前半のロシアで活動した多才な音楽家です。モスクワの地で、長きにわたり音楽に携わるドイツ系の一家に生を受けた彼は、生涯を通じてオルガニスト、ピアニスト、そして作曲家として重要な功績を残しました。

音楽教育とキャリアの形成

ゲディケの音楽の道の第一歩は、彼が生まれたモスクワの音楽院で記されました。ピアノ演奏は、ガリ、パプスト、そしてサフォーノフといった著名な指導者たちの下でその技術を磨きました。作曲については、当初セルゲイ・タネーエフやアレンスキーに教えを受けましたが、1898年頃には正規の作曲課程を離れることを決断し、その後は独学で自身の作曲スタイルを確立していきました。

1909年、母校であるモスクワ音楽院にピアノ科の教授として迎えられたことを機に、彼は教育者としての活動を精力的に展開します。ピアノのみならず、室内楽やオルガンの分野でも教鞭を執り、特にオルガニストとしては、J.S.バッハの作品に対する深い理解と卓越した演奏解釈によって、演奏家としての名声を確立しました。

作曲家としての実績

作曲家としてのアレクサンドル・ゲディケは、オペラや交響曲のような大編成の作品から、様々な楽器のための協奏曲、室内楽曲、そして独奏曲に至るまで、非常に多様なジャンルの作品を生み出しています。中でも、彼自身の演奏活動と密接に関わるオルガン曲とピアノ曲は、その創作活動において特に重要な位置を占めています。正規の作曲教育を比較的短い期間で終えたにもかかわらず、彼の作品には力強い表現と洗練された技法が見られ、高い評価を獲得しました。特に、23歳の若さでコンクールに作品を提出し、ルビンシュタイン賞を受賞したことは、作曲家としての彼の才能を早期から証明する出来事でした。

主な作品群

アレクサンドル・ゲディケが遺した多岐にわたる作品の中から、代表的なものを以下に示します。

交響曲:
交響曲 第1番 ヘ短調
交響曲 第2番 イ長調
交響曲 第3番
協奏曲:
ピアノと管弦楽のためのコンツェルトシュテュック ニ長調 作品11 （1900年）
オルガンと室内オーケストラのための協奏曲 作品35 （1927年）
オルガン協奏曲 （1929年）
ホルン協奏曲 ヘ短調 作品40
トランペット協奏曲 変ロ短調 作品41 （1930年） - 今日でも演奏機会の多い代表作です。
管弦楽曲:
大オーケストラのための劇的序曲 作品7 Overture dramatique
トランペット、ハープと弦楽合奏のための前奏曲 作品24
管弦楽のための6つの即興曲「戦時中に」作品26
室内楽曲:
複数の弦楽四重奏曲
ピアノ五重奏曲
ピアノ三重奏曲
ヴァイオリン・ソナタ第1番
トランペットのための演奏会用練習曲 ト短調 作品49 （1948年）
鍵盤楽器のための作品:
オルガンのための前奏曲とフーガ 作品34
オルガン小曲集 作品84
オルガンのためのコラール前奏曲
ピアノのための小品集 作品6
ピアノのための10のミニアチュール 作品8 （1931年）
声楽曲:
カンタータ《ソ連航空隊に栄光あれ》
* 各種歌曲

関連する音楽家

アレクサンドル・ゲディケは、著名な作曲家ニコライ・メトネルと父方のいとこにあたる関係でした。これは、両家がモスクワの音楽界において重要な役割を果たしていたことを示唆しています。

教育者として数多くの後進を育て、オルガニストとしてはバッハ演奏の第一人者として評価され、そして作曲家として幅広いジャンルで優れた作品を創作したアレクサンドル・フョードロヴィチ・ゲディケは、20世紀ロシア音楽史において見過ごすことのできない存在です。

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