アレクセイ・クルチョーヌイフ

アレクセイ・エリセーエヴィチ・クルチョーヌイフ（1886年 - 1968年）は、ロシア未来派を代表する詩人、作家、出版者です。彼は、既存の言語概念にとらわれない「ザーウミ」（超意味言語）という独自の概念を詩作に導入し、前衛的な芸術運動を牽引しました。

生涯

シベリアの農家に生まれ、オデッサ美術学校で美術を学んだ後、モスクワで文筆活動を開始しました。1912年には、前衛画家のオリガ・ロザノワと結婚しています。

革命以前の活動

クルチョーヌイフは、立体未来派の理論家として、未来派文集に積極的に参加し、「ザーウミ」の実験を試みました。彼は、「芸術家は共通言語だけでなく、個人的な言語を用いて表現を行ってよい」と主張し、言葉の既存の意味にとらわれず、音や響きを重視した詩作を追求しました。彼の詩の一節「ドィル ブル シチル」は、意味を持たないザーウミの代名詞となりました。また、論文「言葉そのものの宣言」では、「言葉は使い古されており、純粋な状態を取り戻す必要がある」と主張し、言葉の新たな可能性を提唱しました。

主な作品には、フレーブニコフとの共作『地獄の戯れ』や『破裂』などがあります。また、「最初の未来のオペラ」とされる『太陽の征服』の台本も担当しました。

革命後の活動

第一次世界大戦と革命の時期はトビリシで過ごし、グループ「41°」を結成して活動を続けました。1920年代にはモスクワに戻り、芸術左翼戦線（レフ）に所属しました。この時期には、韻文推理小説『盗賊ワーニカとマニキュア娘ソーニカ』や、ジャズのリズムを取り入れた詩集『イロニアーダ』などを発表しました。

クルチョーヌイフは、エセーニンに関する伝記的小冊子も執筆しましたが、同時代人からは否定的に評価されました。しかし、マヤコフスキーは、クルチョーヌイフを未来派の詩人として高く評価し、その功績を称えました。

1930年代には、形式主義者として批判され、文壇から姿を消しましたが、晩年は自身の時代の文学的・芸術的遺産の収集家として知られるようになりました。1950年代には、リアノゾヴォ派の詩人や若い世代の芸術家たちを励まし、彼らの活動を支援しました。

主要な著作

詩
『地獄の戯れ』（1912、1913）
『破裂』（1913）

オペラ
『太陽の征服』（1913）

詩集
『イロニアーダ』（1930）

論文
「言葉そのもの」（1913）
「言葉の新しい方法（未来の言語、死への象徴）」（1913）
「言葉のファクトゥーラ」（1922）

小説
『盗賊ワーニカとマニキュア娘ソーニカ』（1925）

クルチョーヌイフは、その革新的な詩作と理論によって、20世紀の芸術に大きな影響を与えた人物です。彼の作品は、今日においても、詩の可能性を追求する上で重要な示唆を与え続けています。

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