アレックス・ツェーレ

アレックス・ツェーレ：栄光と波乱に満ちたスイスのロードレーサー

アレックス・ツェーレ（Alex Zülle）は、1968年生まれのスイス出身の自転車競技選手です。彼の名前は、ロードレース界において、特に1990年代に重要な存在感を示しました。日本では「ツェーレ」や「ツーレ」と表記されます。

プロキャリアの幕開けと頭角

1991年、ツェーレは名門オンセ（ONCE）チームに加入し、すぐにチームのエースとしての地位を確立します。翌1992年には、カタルーニャ一周レースの個人タイムトライアルで、当時圧倒的な強さを誇っていたミゲル・インドゥラインの連勝を阻止するという大金星を挙げました。この勝利で、ツェーレは一躍注目を集める存在となります。

1995年のツール・ド・フランスでは、5連覇を達成したインドゥラインに果敢に挑み、総合2位（区間1勝）という好成績を収めました。この活躍により、ツェーレの名前はロードレース界に広く知れ渡ることとなります。

グランツールでの活躍

ツェーレは、ブエルタ・ア・エスパーニャにおいて、1996年と1997年に見事な連覇を達成しました。また、1996年には、地元スイスのルガーノで開催された世界自転車選手権の個人タイムトライアルで優勝するという快挙を成し遂げました。

チーム移籍とドーピング問題

オンセでは、チームメイトのローラン・ジャラベールが台頭してきたため、ツェーレは1998年にフェスティナ（Festina）に移籍します。しかし、そのフェスティナ時代に、ツール・ド・フランスでチームぐるみのドーピングスキャンダル（フェスティナ事件）が発覚します。前年まで山岳賞を4年連続で獲得していたリシャール・ヴィランクら、チームの主力選手とともに、チーム全員が大会から追放されるという事態に見舞われました。

この事件の取り調べで、ツェーレは問題となったエリスロポエチン（EPO）の使用を認めました。さらに、「使用は個人が行ったものではなく、スポンサーのためだった」と供述し、ドーピングがチームによる組織的なものであったことを示唆しました。この事件は、ツェーレのキャリアに大きな影を落とすこととなりました。

バネストへの移籍と再びのツール挑戦

その後、ツェーレはバネスト（Banesto）に移籍し、1999年のツール・ド・フランスに出場します。序盤の集団落車に巻き込まれ、絶望的な状況に追い込まれながらも、この大会から連覇街道をひた走ることになるランス・アームストロング（後にドーピングによりタイトル剥奪）に次いで、再び総合2位に入賞しました。

2002年には、ツール・ド・スイスで総合優勝を果たし、その実力を改めて証明しました。

引退と近視の問題

2004年、アレックス・ツェーレは現役を引退しました。現役時代は、重要な局面で落車に見舞われることが多く、優勝候補と目されていたレースでも、その実力を十分に発揮できないことがありました。これは、彼の極度の近視が原因でした。監督からは、常に視力矯正手術を受けるように勧められていましたが、彼は最後まで眼鏡レンズを内蔵したゴーグルの使用にこだわりました。

アレックス・ツェーレは、その才能と実力でロードレース界に名を残した一方で、ドーピング問題や不運な事故にも見舞われた、波乱万丈なキャリアを送った選手として記憶されています。

[外部リンク]

アレックス・ツェーレ - サイクリングアーカイヴス（英語）
アレックス・ツェーレ - Olympedia（英語）

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