アロー (ミサイル)

アロー弾道ミサイル迎撃システム

アロー（Arrow）は、イスラエルが開発した弾道ミサイル迎撃用のシステムです。このシステムは、イスラエル航空宇宙産業（IAI）を主契約者として、アメリカ合衆国の資金と技術支援を受けて制作されています。アローは迎撃ミサイルだけでなく、ミサイル発射機、レーダー、射撃管制センターを含む包括的な防空システムとして位置付けられています。

概要

アローシステムは第一世代として「アロー1」が開発されましたが、実際に配備されたのはその後に進化した「アロー2」と「アロー3」です。特に、アロー2はマッハ9の速度に達する能力を持っており、高度10-50キロメートルの範囲で弾道ミサイルを迎撃します。この迎撃には、赤外線センサーとアクティブレーダーを併用した終末誘導方式が採用されています。アロー2の各コンポーネントは移動式で、6連装のミサイル発射機、相手を捉えることができるフェーズドアレイレーダー、射撃指揮システムから成っています。特に、グリーンパインレーダーは500kmの範囲で最大14目標を同時に追尾する能力があります。

アロー3については、大気圏外で中距離弾道ミサイルを撃破することができるように設計されています。これは、特にイランなど周辺地域の脅威に対処するために重要な役割を果たしています。

開発・配備の歴史

イスラエルは1986年、中東諸国が準備進める弾道ミサイルに対応するために、アメリカと共同で開発を開始しました。1988年には、イツハク・ラビン国防相が正式に共同開発への合意書に署名しました。1990年には初めての発射実験が行われましたが、当初は成功を収めていませんでした。しかし、1991年の湾岸戦争で実際に弾道攻撃を受けたことから、迎撃ミサイルの開発は急速に進展します。

1994年には、初めて迎撃テストに成功し、その後アロー2の開発が開始されました。1996年には初めてアロー2による迎撃試験が成功し、その後のテストでも非常に良好な成績を残しました。2020年3月には、アロー2装備部隊が実戦配備され、これは世界初の戦域ミサイル防衛専用迎撃システムの実装となりました。さらに、2017年にはアロー3が実戦部隊に導入され、イスラエル国内では複数の迎撃部隊が設けられています。

実戦での運用

アローシステムは、その実戦能力が検証されています。2017年には、シリアの防空部隊から発射された高高度地対空ミサイルをアロー2で迎撃し、成功を収めました。また、2023年11月には、アロー3が初めてハマースからの弾道ミサイルを撃墜する実績を上げました。さらに、2024年4月にはイランの攻撃に対してアロー2とアロー3が共に迎撃に成功したとの報告があります。

主な性能

アロー2の具体的な性能は以下の通りです：

• - 全長：7.0メートル
• - 直径：0.8メートル
• - エンジン：2段式固体ロケット
• - 発射重量：1,300kg
• - 速度：マッハ9
• - 迎撃高度：10-50km
• - 迎撃半径：90km
• - 弾頭：破片効果（指向性）

国際展開

最近では、イスラエル政府がアメリカとの協力の下、アロー3をドイツに売却することを決定しました。この売却は、ヨーロッパにおける防空構想「スカイシールド」の中心的役割を果たすことを目指しています。北大西洋条約機構（NATO）を通じて、他の加盟国とも連携が進んでいます。未来の防衛のために、アローシステムは重要な戦略的要素となるでしょう。

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