アングリマーラ経

アングリマーラ経

『アングリマーラ経』は、パーリ仏典に収められた重要な経典の一つであり、その内容は特に人間の改心の可能性を描いています。この経典では、過去に凶悪な犯罪を犯していたアングリマーラという男が、仏教の教えによってどのようにして阿羅漢の境地に達するに至ったのかを語ります。アングリマーラは、実際に99人を殺し、その指を切り取って首飾りにしてしまった残忍な存在でしたが、釈迦との出会いを通じて驚くべき変化を遂げます。

経典の背景と構成

その内容は、当時の社会の価値観や宗教に対する批判的な視点も含まれており、アングリマーラの物語はサーヴァッティーにあるアナータピンディカ園での出来事を中心に展開されます。登場人物には、教えを広める釈迦やアングリマーラを捕らえようとするパセーナディ王が含まれます。

物語は、アングリマーラが過去の行いやその悪行を自覚し、改心するところから始まります。ある日、彼は最愛の母に手をかけようとした瞬間、釈迦が出現します。釈迦はアングリマーラの進む道を制止し、逆に彼に止まるべきは自分だという気づきをもたらします。これにより、アングリマーラは悔い改める決意をし、出家を懇願します。

アングリマーラの出家と試練

釈迦はその願いを受け入れ、アングリマーラは出家者として新たな人生を歩み始めます。しかし、過去を背負って生きる彼には、町の人々やその親族からの怒りや恐れがつきまといます。彼が托鉢に出かける度に、石を投げつけられたり暴行を受けたりする苦難が続きます。それでも釈迦は彼に耐えることを命じ、アングリマーラは毎日その試練を続けていきます。

ある日、托鉢中にアングリマーラは苦しむ妊婦に出会います。彼は自らの過去を思い、どうすることもできない自分に無力感を覚えます。しかし、釈迦は彼にその妊婦のもとに行き、言葉をかけるよう指示します。その言葉は「自分は生まれてから一度も殺生をしたことがない」というものでした。アングリマーラは自らの過去を考え、その言葉を口にすることができないと答えますが、釈迦は根本的な真理を示します。

阿羅漢への成長

釈迦の助けもあり、アングリマーラは再び言葉を口に出し、妊婦に対して幸福を祈ることができるようになります。その結果、妊婦は無事に出産するのです。これを経験した彼は、釈迦の教えを受け入れ、煩悩の根を断ち切り、最終的には阿羅漢に至ることができました。アングリマーラは、今までの放逸や悪業、さらには殺生を成さなかった自らの新しい生を喜び、歓喜の詩を詠います。

この経典は、過去の罪を抱え持つ者でも、真剣に悔い改め、努力することで救われる可能性があることを示しています。アングリマーラ経は、改心と救済の物語として、多くの人に希望を与え続けています。

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