アンコール

アンコールとは

アンコール（仏：encore）は、音楽のコンサートやリサイタルにおいて、演奏者に追加演奏を求めるための合図や声を指します。またこの言葉は、再度演奏される曲のタイトルやその行為そのものを示すこともあります。さらに、日常的には過去に行ったことをもう一度行う際に使われることもあります。たとえば、「アンコール放映」などの表現で見受けられます。

クラシック音楽におけるアンコール

クラシック音楽のコンサートやリサイタルにおけるアンコールは、通常、プログラムに掲載された主要な演目が全て終了した後に行われります。しかし、オーケストラの演奏会では、前半の休憩前に独奏者がアンコールを演奏する場面もよく見られます。

聴衆がアンコールを促す場合、スタンディングオベーションや熱烈な拍手が合図となります。この時、演奏者は感謝の意を込めてアンコール曲を披露します。拍手が途切れない限り、追加のアンコール曲が演奏されることもあります。

アンコールとして演奏される曲は、一般に知名度の高い短い楽曲や編曲作品が選ばれる傾向がありますが、時にはあまり知られていない作品が演奏されることもあります。また、演奏者が時に準備していない場合には、その日のプログラムの曲が再演されることもあります。特定の行事では、定番のアンコール曲が存在することもあります。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤーコンサートでは、《ラデツキー行進曲》や《美しく青きドナウ》が毎年演奏される伝統があります。

このように、演奏者は観客の反応に対して応じてアンコールを行うため、演奏される曲の著作権も考慮する必要があります。著作権の観点から、プログラム外での演奏では曲名や著作者を告知することが求められ、著作者の権利を守るために必須の措置とされています。演奏後、曲名や著作者名を掲示することもあるのです。

オペラにおけるアンコール

オペラに際してのアンコールは、主に独唱者へのアリア再唱の要求として現れます。この習慣は17世紀のヴェネツィアで既に見られ、特にイタリアオペラで強く示されていました。しかし、音楽の流れを断ち切ることから、指揮者の中にはアンコールを厳格に拒否するケースもありました。トスカニーニは1910年代からアンコールを行わないことで賛否を巻き起こしましたが、1950年代以降は演出家の役割が強化されたことで、オペラのアリアアンコールは減少傾向にあります。

ポピュラー音楽におけるアンコール

ロックやポップミュージックの分野では、アンコールを第2部のように扱うことがあります。例えば、ボブ・マーリー＆ザ・ウェイラーズのコンサートでは、アンコールが一連の流れの一部となることが見られます。しかし、ポピュラー音楽においては、アンコールの曲と第2部の区別が明確でない場合もあり、一定のルールは存在しません。

語源

「アンコール」という言葉はフランス語のencore（再び）に起源を持ちますが、その意味で使用されるのは主に英語圏です。フランスでは「Une autre」や「bis」といった表現が用いられています。英語圏においては、1711年から1712年にかけて発行された日刊紙『スペクテイター』において、聴衆が気に入った歌に対して「encore」と叫び、演奏者が再度演奏する習慣があったことが記されています。この流れから、18世紀以降、アンコールが広まっていったと考えられています。

また、ドイツ語では「ツーガーベ（Zugabe）」、イタリア語では「アンコーラ（Ancora）」と呼ばれることがあります。このように、アンコールは音楽の演技が終わった後の重要な儀式であり、観客と演奏者の間の特別な交流の瞬間となっています。

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