アンゴラ狂乱

アンゴラ狂乱（あんごらきょうらん）

概要

アンゴラ狂乱とは、1930年から1931年にかけて日本国内で起きた、アンゴラウサギに関連した投機的な流行を指します。この現象は、「アンゴラ黄金時代」とも称され、特にウサギの毛を利用した産業において注目を集めました。その背景には、アンゴラウサギの長い毛が毛糸や毛織物として重宝されることがあり、国内外での需要増加が影響しました。

発端と背景

アンゴラ狂乱のきっかけは、1930年10月に発行された雑誌『主婦之友』での実用的な飼育指南記事にありました。記事には、アンゴラウサギを飼育することで得られる利益が、従来の肉用や毛皮用のウサギに比べて3〜4倍であると書かれていました。しかし実際にはそれが過度に誇張され、興味を引くために改作され、簡単に儲かるといった内容になっていました。このことが、不況に苦しむ日本国内で急速に人気を集めました。

高品質なアンゴラ兎毛の輸出は国益にもなるとの建前も流行を助長し、結果として国中に広がることとなりました。

流行の広がり

過去のウサギバブルが都市部に限定されていたのに対し、アンゴラ狂乱は日本全国に広まりました。昭和5年の春までに、その影響は東京、神奈川、静岡、愛知、大阪などの都市に留まらず、さらには北海道や沖縄、さらには朝鮮半島や満州にまで及びました。

アンゴラウサギの飼育を目的とした新たな事業体や商会が急増し、「アンゴラ屋」と呼ばれる店も各地に開店しました。特に神戸から大阪を中心に170〜180軒、名古屋には120〜130軒、東京には140〜150軒もの店舗が出現したとされています。

事態の推移

当初、高価格だったアンゴラウサギの需要は急速に高まりましたが、この急激な流入により質の低下が始まります。また、国外からのアンゴラウサギの輸入も本格化し、カナダからの安価な輸入が始まったことで、国内市場において外国製品が溢れることとなりました。しばらくすると、ユーザーの期待に応えられない品質の悪化が進み、血統書の発行が軽視されるようになり、偽造の流行も見られました。

農林省の警告

農林省は、この流行に対する懸念を受けて昭和6年春に、飼育の危険さを指摘する通達を出しました。この内容に従い、メディアも相次いで否定的な報道を行うようになりました。その結果、価格は一気に暴落し、アンゴラウサギを販売する多くの企業が倒産に追い込まれました。

終息とその後

こうして1931年の終わり頃には、アンゴラ狂乱は沈静化しました。しかしその後も、アンゴラウサギの飼育は1940年代に再び見直されました。特に1932年に設立された東京アンゴラ兎毛株式会社が、アンゴラウサギの飼育を本格的に支援する体制を築くことになり、ようやく持続可能な事業へと回帰していくことができました。このように、アンゴラ狂乱は短期間でありながら、日本の産業に深い影響を及ぼした重要な経済現象であると言えます。

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