アンセリミムス

アンセリミムス：白亜紀後期の俊足恐竜

アンセリミムス( Anserimimus )は、約7000万年前の[白亜紀]]後期、現在のモンゴルに生息していたオルニトミムス科に属する獣脚類恐竜です。名前はラテン語で「雁]」を意味する anser とギリシャ語で「まねもの」を意味する mimos を組み合わせたものであり、「[[雁のようなもの」という意味を持ちます。ただし、実際に雁と類似しているわけではなく、他のオルニトミムス類と同様に、鳥類に似た名前が付けられた例の一つと言えるでしょう。

発見と研究の歴史

アンセリミムスの化石は、1970年代後半にソ連とモンゴルの合同調査隊によってモンゴルで発見されました。1988年、モンゴルの古生物学者リンチェン・バルボルドによって記載・命名されました。

現在、アンセリミムス planinychus という一つの種が知られています。種小名 planinychus は、平らな鉤爪(onyx)を意味する言葉に由来しています。この平らな鉤爪は、アンセリミムスの特徴的な形態の一つです。

当初、アンセリミムスの化石資料は限られており、その生態や形態に関する情報は不足していました。しかし、2005年には新たな部分骨格標本が報告され、アンセリミムスの解剖学的特徴に関する理解が深まりました。これらの研究により、アンセリミムスが他のオルニトミムス類とは異なる特徴を持つことが明らかになってきました。

アンセリミムスの形態

アンセリミムスは中型サイズのオルニトミムス類で、推定体長は約3メートル、体重は約50キログラムと推定されています。特徴的なのは、その前肢です。他のオルニトミムス類と比べてがっしりとした構造をしており、大きな筋肉が付着していた痕跡が見られます。また、手の鉤爪は長く、下側がほぼ平らな形状をしています。この平らな鉤爪は、他のオルニトミムス類には見られない特徴です。足はアーチ状の構造（アークトメタターサル）をしており、これは優れた走行能力を示唆しています。

生息環境と生態

アンセリミムスは、モンゴルのネメグト累層という地層から発見されています。この地層からは、様々な恐竜の化石が発見されており、アンセリミムスは、タルボサウルスなどの大型獣脚類、ハドロサウルス類、アンキロサウルス類、竜脚類など、多様な恐竜と共存していたと考えられています。ネメグト累層の環境は、川や湖沼など水辺の環境が豊富だったと推測されており、アンセリミムスもそのような環境で生活していた可能性があります。

アンセリミムスの食性については、頭骨化石が発見されていないため、断定できません。しかし、他のオルニトミムス類は雑食性であると推測されており、アンセリミムスも同様の食性を持っていた可能性が高いです。そのがっしりとした前肢は、植物を採食したり、昆虫などの小動物を捕獲するのに役立っていたかもしれません。しかし、平らな鉤爪の機能については、まだ解明されていません。

分類

アンセリミムスは、系統解析の結果から、オルニトミムス科に属すると考えられています。特に、同じネメグト累層から産出したガリミムスと近縁である可能性が指摘されています。しかし、他のオルニトミムス科との類縁関係については、さらなる研究が必要です。

まとめ

アンセリミムスは、その独特な形態と、白亜紀後期のモンゴルの多様な生態系の中で生きていた魅力的な恐竜です。今後の研究によって、その生態や進化史に関する理解がさらに深まることが期待されます。

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