アンソニー・アームストロング＝ジョーンズ (初代スノードン伯爵)

初代スノードン伯爵アンソニー・アームストロング＝ジョーンズは、20世紀を代表する英国の写真家であり、貴族として知られる人物です。1930年3月7日生まれの彼は、弁護士の息子として裕福な家庭で育ちました。しかし、両親の離婚や幼少期のポリオ罹患など、波乱に満ちた子供時代を経験しています。

イートン校を経てケンブリッジ大学ジーザス・カレッジに進学。建築を専攻しましたが、卒業試験には合格しませんでした。在学中はボートクラブに所属し、1950年のオックスフォード大学とのボートレースでは舵手としてチームを勝利に導く活躍を見せました。

大学卒業後、写真家としての道を歩み始めます。その才能は瞬く間に開花し、1957年にはエリザベス2世のカナダ訪問に同行するなど、早くから王室との接点を持つようになります。1960年代には『サンデー・タイムズ』の芸術監修を務め、1970年代には英国最高のカメラマンと称されるまでになりました。『ヴォーグ』、『ヴァニティ・フェア』、『デイリー・テレグラフ』といった著名な媒体に作品が掲載され、そのキャリアはファッションからドキュメンタリーまで多岐に渡ります。特に、世界中の著名人を被写体とした肖像写真は高く評価され、2001年にはナショナル・ポートレート・ギャラリーで回顧展が開催されるなど、その名声は確固たるものとなりました。

写真家としての活動と並行して、空間構成の監修にも携わっています。Frank Newby、Cedric Priceの作品、ロンドン動物園の鳥小屋など、多様なプロジェクトに参加。1969年には、チャールズ3世（当時プリンス・オブ・ウェールズ）の叙爵式典の統括も務めました。

1960年、エリザベス2世の妹であるマーガレット王女と結婚。ウエストミンスター寺院での結婚式は、世界中から注目を集めました。王女との結婚を機に、スノードン伯爵の爵位を授けられます。これは、ハノーヴァー朝以降の王族の配偶者としては初のことで、平民出身の彼が王女にふさわしい地位を与えられたことを示しています。2人の間には、第2代スノードン伯爵デイヴィッドと、レディー・サラ・チャットの2人の子供が誕生しました。

しかし、結婚生活は長くは続きませんでした。王女の過去の恋愛遍歴や、2人の性格の不一致、アンソニーの多忙などが原因で、結婚生活は破綻。アンソニーの性的嗜好に関する噂や、両者の不倫報道が絶えず、ゴシップ誌を賑わせました。1978年に正式に離婚。

離婚後、アンソニーは映像ディレクターのマイケル・リンゼイ＝ホッグ準男爵の元妻であるルーシーと再婚し、1人の娘をもうけます。しかし、この結婚生活も長くは続かず、愛人関係にあったジャーナリストのアン・ヒルズの自殺や、隠し子の存在発覚などを経て、2000年に離婚しています。

アンソニー・アームストロング＝ジョーンズは、王室との繋がり、卓越した写真家としての才能、そして複雑な私生活という、相反する要素を併せ持った、魅力的で謎めいた人物でした。彼の波乱に満ちた生涯は、現代イギリス史において重要な一ページを飾っています。

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