アンソニー・パーキンス

アンソニー・パーキンス：ハリウッドスターの光と影

1932年、ニューヨークに生まれたアンソニー・パーキンスは、舞台俳優の父を持つ環境で育ちました。しかし、5歳の時に父を亡くした彼は、幼いながらも俳優の道を志します。舞台を経て1953年、映画『女優』でスクリーンデビューを果たしました。その後、順風満帆とはいかず、地道なキャリアを重ねていきますが、1956年、ウィリアム・ワイラー監督の『友情ある説得』でアカデミー助演男優賞にノミネートされ、注目を集めるようになりました。

1950年代後半から1960年代初頭にかけては、『ロンリー・マン』『胸に輝く星』『海の壁』『渚にて』など数々の映画に出演し、青春スターとして絶大な人気を博しました。オードリー・ヘプバーンやジェーン・フォンダといった大物女優との共演も多く、自身の美声を披露する場面もありました。歌手としても活動し、シングル「月影のなぎさ」を発表、アルバムもリリースしています。

しかし、パーキンスのキャリアを決定づけたのは、1960年のアルフレッド・ヒッチコック監督作品『サイコ』での主演でした。殺人鬼ノーマン・ベイツ役を演じた彼は、その強烈な演技で観客に深い印象を与え、世界的なスターとなりました。翌年には、イングリッド・バーグマン、イヴ・モンタン共演の『さよならをもう一度』でカンヌ国際映画祭 男優賞を受賞するなど、輝かしい実績を残しました。

1960年代後半からは、ハリウッドの体質に嫌気がさし、フランスへ移住。フランス語が堪能だった彼は、ヨーロッパ映画を中心に活躍し、フイルムノワール作品などで主演を多く務めました。日本では『審判』『真夜中へ5哩』『パリは燃えているか』『かわいい毒草』など多くの作品が公開され、その若々しい容姿から30代後半になっても学生役を演じることもありました。1974年には、アガサ・クリスティー原作の『オリエント急行殺人事件』に出演し、大作映画への出演を再開しました。

1970年代以降は、CM出演、舞台、脚本執筆など、活動の幅を広げ、1980年代には監督業にも挑戦しました。しかし、同性愛説や薬物関連のスキャンダルがキャリアに影を落とし、晩年は暗いニュースに悩まされることになります。『サイコ』シリーズの続編やホラー、サスペンス映画への出演が多くなり、その才能を十分に発揮しきれなかった時期もありました。それでも1987年のテレビドラマ『英雄物語/ナポレオンとジョセフィーヌ』では高い評価を得ています。

パーキンスは1992年、エイズによる合併症のため、50歳という若さで亡くなりました。彼の死を悼む声が、映画界から多く寄せられました。彼の没後も、ユニバーサル・スタジオ・フロリダのアトラクションで、彼のメモリアル映像を観賞することができます。

私生活では、1978年に女優のベリー・ベレンソンと結婚し、2人の息子をもうけました。しかし、悲劇的に、彼の妻は2001年のアメリカ同時多発テロ事件の犠牲となりました。長男は俳優、次男はシンガーソングライターとして活躍しています。

アンソニー・パーキンスは、華麗なキャリアと複雑な私生活、そして早すぎる死という、ドラマチックな人生を送りました。彼の残した作品は、今もなお世界中の観客を魅了し続けています。彼の人生は、成功と苦悩、光と影が複雑に絡み合った、まさにハリウッドの物語そのものと言えるでしょう。

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