イヴ・モンタン

イヴ・モンタン：波瀾万丈の生涯を彩る歌声と政治への情熱

1921年、イタリアのモンスンマーノ・テルメに生まれたイヴ・モンタン。本名はイーヴォ・リーヴィ。敬虔なカトリック信者の母と共産主義者である父を持つ家庭環境は、後に彼の思想や生き方に大きな影響を与えることになります。ムッソリーニ政権下のイタリアを逃れ、1923年に一家でフランスに移住。マルセイユで港湾労働者や姉の美容室従業員として働きながら、次第にミュージックホールで歌うようになります。

モンタンの転機は、1944年にエディット・ピアフと出会ったことです。ピアフは、彼の才能を見出し、指導者として、そして愛人として、モンタンの人生に深く関わります。この出会いをきっかけに、彼の歌手としてのキャリアは大きく飛躍を始めました。1945年には映画デビューを果たし、1946年に出演した映画『夜の門』で歌った「枯葉」は、大ヒットを記録します。

1951年、女優のシモーヌ・シニョレと結婚。シニョレはモンタンの芸術活動を支えるだけでなく、夫婦でフランス共産党の活動にも参加するなど、公私共に強い絆で結ばれました。1957年には、シニョレと共に東側諸国をコンサートツアーで回るなど、政治的活動も活発に行っていました。

国際的な活躍も目覚ましく、1961年にはハリウッド映画『青い目の蝶々さん』の撮影のため来日。鎌倉、奈良、京都などを訪れ、約2ヶ月間の滞在で日本の文化に触れました。その後も、1982年にはワールドツアーで再び来日し、NHKのインタビューにも応じるなど、日本での人気も高まりました。インタビューでは政治への関心の理由を問われ、「ははは！全ての出来事は政治的ですよ！」と答えており、彼の政治への強い関心が伺えます。

私生活では、数々の浮気がスキャンダルとして報じられ、特にマリリン・モンローとの関係はシニョレの自殺未遂にまで発展しました。しかし、シニョレとは1985年に彼女が亡くなるまで連れ添いました。その後、38歳年下のキャロル・アミエルと結婚し、1988年には唯一の実子ヴァランタンをもうけています。

モンタンは、1991年11月9日、映画『IP5/愛を探す旅人たち』の撮影直後、心臓発作で急死。享年70歳でした。

彼の残した足跡は、映画や歌声を通じて多くの人々の心に深く刻まれています。フランスを代表するシャンソン歌手としてだけでなく、政治への強い関与や、数々の恋愛スキャンダル、そして多様な才能を持つ俳優としても、イヴ・モンタンは20世紀を代表する重要な人物の一人と言えるでしょう。

主な出演作品

映画、音楽活動の他、日本のテレビ番組『スター千一夜』（1963年）にも出演しています。

主な日本語文献

・イヴ・モンタン『頭にいっぱい太陽を』
・リシャール・カナヴォ／アンリ・キクレ 『イヴ・モンタン　ある男の歌』
・鈴木明『イヴ・モンタン　20世紀の華麗な幻影』
・エルヴェ・アモン／パトリック・ロトマン『イヴ・モンタン ぼくの時代　花開くまで』
・『イヴ・モンタン ぼくの時代　パリに抱かれて』

これらの文献は、彼の生涯や活動を知る上で貴重な資料となっています。

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