アンチ・ミステリー

アンチ・ミステリーとは

アンチ・ミステリーは、狭い意味で三大奇書を指し、広い意味では推理小説の体裁を持ちながら、その枠を超えようとする一つのジャンルを示します。この文章では、特に広義でのアンチ・ミステリーについて詳しく探っていきます。

概要

この用語は、作家の齋藤愼爾と埴谷雄高によって考案されました。当初、三大奇書と呼ばれる作品群について述べる際に使われていました。具体的には、中井英夫が自身の作品『虚無への供物』において、アンチ・ミステリーの定義に触れています。

中井は自らの作品を「アンチ・ミステリー」と呼び、「反推理小説」とも言及しており、彼の言葉では以下のように述べています。

「むかし、S・S・ヴァン・ダインは、ジャッコーと名づけたスコッチ・テリアを愛玩していたが、そのことが私の思考を引き起こし、アンチ・ミステリー、反推理小説を考えることになった。」

このように、アンチ・ミステリーは単に推理小説の範疇を超える存在であると同時に、メタ的な要素も取り入れることが多いのです。

主要作品とその特性

『黒死館殺人事件』や『ドグラ・マグラ』、『虚無への供物』といった作品群は、最初は「ミステリーらしくない」という特徴を持っていましたが、意図的に推理小説の伝統から逸脱しているため、アンチ・ミステリーとして扱われるようになりました。これらの作品は、叙述や構成が独特であり、それによって読者に新たな視点を提供します。

例えば、中井英夫の『虚無への供物』は、推理小説の伝統を否定する要素を含む一方で、その物語は一般的な推理小説の構造を持っています。この矛盾した性質が、作品をより複雑で興味深いものにしているのです。

アンチ・ミステリーの発展

いつの頃からか、アンチ・ミステリーは三大奇書の精神を引き継ぎながら、別の方向にも発展を遂げます。特有のエッセンスを持った推理小説が次々と現れ、ジャンルとしての確立が進みました。この流れは、従来の推理小説に対する挑戦と捉えられています。

ただし、このスタイルは時に理解が難しくなり、読者にとっては不満を招く要因ともなり得ます。実際、アンチ・ミステリーの作品はその内容が意図的に愚作や不公平さを醸し出すこともありますが、それによって新たな読書体験を提供することを目的としています。

代表的な作家と作品

一般的に、アンチ・ミステリーの代表作とされるのは中井英夫の『虚無への供物』です。中井は自身の作品を「アンチ・ミステリー」と確認しているため、その作品に対する理解が深まることでしょう。しかし、その内容自体は一見すると通常の推理小説と変わらないため、読者はそのジャンルを見逃してしまうことも多々あります。これはアンチ・ミステリーが持つ一つの特性であると言えるでしょう。

総じて、アンチ・ミステリーは、その本質が一見矛盾した存在でありながら、深い思索や新たな視点を提供することを目指す革新的な文学ジャンルと言えます。

もう一度検索