アンティオキア総主教庁

アンティオキア総主教庁

アンティオキア総主教庁は、正教会の中で重要な位置を占める教会組織であり、そのルーツは古代の五つの総主教座の一つに遡ることができます。正式名称は「アンティオキアおよび全東方の総主教庁」であり、一般にはアンティオキア正教会と呼ばれることが多いです。この総主教庁は、主にシリアに属し、特に教会の伝統と歴史において重要な役割を果たしています。

初代の総主教は、使徒ペトロとされています。現在の総主教であるユーハンナー10世ヤーズジーは、2013年に前任者のイグナーティユース4世ハズィームの死後に選ばれ、その地位に就いています。公式には、総主教庁は現トルコのアンティオキアに置かれるものの、実際の執務はシリアのダマスカスで行われています。アンティオキア正教会は、古代のアンティオキア教会の伝統を受け継ぎ、最も古いキリスト教の教会の一つとされています。

アンティオキア総主教庁は、シリアのほかにもアメリカやヨーロッパ各国に教区を展開し、多様な信者を抱えています。信者の中には主にアラビア語および英語を使用する人々が含まれており、特に宣教活動において活発に活動しています。そのため、他の教派と比べて非常に顕著な存在感を示しています。

しかし、近年のシリア内戦はこの総主教庁にも深刻な影響を及ぼしています。2011年から続くこの戦争において、非カルケドン派の教会や東方典礼カトリック教会と共に、イスラム系過激派による破壊活動の標的にされることが増えました。聖堂が破壊されるなどの物的損害に加え、2012年初には司祭が殺害され、2013年4月にはアンティオキア正教会とシリア正教会からそれぞれ主教が誘拐される事件が発生しました。これにより、教会コミュニティの信者たちにも多大な影響が生じてしまっています。

アンティオキア総主教庁は、こうした情勢に対しても信仰を持って活動を続け、地域の平和と信仰の回復を目指しています。特にシリア内戦の最中においても、地域コミュニティの支援や信者の保護を図る努力がなされています。

このように、アンティオキア総主教庁はその長い歴史と地域への深いコミットメントを持ちながら、複雑な状況に直面しています。それでもなお、信者たちの信仰と希望を支え続ける重要な存在であり、その使命を全うするために尽力しています。

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