総主教

総主教とは

総主教（そうしゅきょう、英語: Patriarch）は、正教会及び東方教会における最高位の聖職者であり、最上位の主教品に位置づけられています。彼は特定の独立した正教会における首座主教の称号を有しており、同時に他の主教よりも高い地位を持つ存在となります。一般的に「総主教」と称される役割は、教区や教会、事務局、さらには総主教邸を含む「総主教庁」において見ることができます。彼に対する敬称としては「His Holiness（聖下）」が用いられます。

総主教の語義と語源

「総主教」という言葉は、ギリシア語の「πατριάρχης」（パトリアルヒス）から派生しています。この言葉は、「父」を意味する「πατήρ（pater）」と「指導者」や「支配者」を意味する「ἄρχων（archon）」が合成されてできたもので、族長の意を持っています。このような語源の背景から、総主教の役職が「教会の父」としての意味合いを持つことが理解できます。

歴史的背景

この総主教の称号は、元々旧約聖書のアブラハムやイサク、ヤコブといった族長を指すものでした。その後、キリスト教の初期には全ての主教に対する敬称の一つとして使われましたが、時間の経過とともに特定の重要な教区の主教に対する特別な称号へと変化していきました。実際に「パトリアルヒス（Patriarch）」という称号が正式に使用されるようになったのは7世紀末のことでした。

692年に開催されたトゥルーリ公会議では、ローマ、コンスタンディヌーポリ、アレクサンドリア、アンティオキア、エルサレムの各主教座が五大総主教区として認められました。しかし、総主教の名称自体はその条文には含まれておらず、別の欄に記載されています。この公会議の中での用語への明確な規定は、後の教会の権威構造に大きな影響を与えました。

現代の正教会における総主教

現在、正教会には9人の総主教が存在します。これには古代から受け継がれた五大総主教区に由来するものと、後代に新たに権威を認められたものが含まれます。儀礼上の序列はあるものの、各総主教は基本的に対等な関係にありますが、名誉上はコンスタンディヌーポリ総主教庁が首位とされています。

古代の五大総主教区から継承した総主教

- コンスタンディヌーポリ総主教 （コンスタンティノープルの大主教・新ローマ及び全地の総主教）
- アレクサンドリア総主教・パパ （アレクサンドリア及び全アフリカのパパ・総主教）
- アンティオキア総主教 （アンティオキア及び全東方の総主教）
- エルサレム総主教 （エルサレム及び聖シオンの総主教）

後代に成立した総主教

- ブルガリア総主教 （ソフィアの府主教・全ブルガリアの総主教）- 927年設立
- グルジア総主教 （ムツケタとトビリシの大主教・全グルジアのカトリコス総主教）- 1008年設立
- セルビア総主教 （ベオグラード及びカルロヴツィの府主教・ペーチの大主教・全セルビアの総主教）- 1375年設立
- モスクワ総[[主教]] （モスクワ及び全ロシアの総主教）- 1589年設立
- ルーマニア総主教 （カッパドキアのカイサリアの主教代行・ハンガリー＝ワラキアの府主教・ブクレシュティの大主教・全ルーマニアの総主教）- 1925年設立

その他の教会における総主教

非カルケドン派の東方諸教会にも総主教が存在し、これらの教会はコンスタンディヌーポリ総主教とは異なる系統を持っています。アレクサンドリア総主教・パパ（コプト正教会）、アンティオキア総主教（シリア正教会）、ヤコブ派のインドのカトリコス、アルメニア使徒教会、エチオピア正教会などがその代表です。これにより、各教会が独自の教義や信仰を基に運営されていることが伺えます。

カトリック教会における対比

ローマ・カトリック教会では「Patriarch」を「総大司教」と訳していますが、正教会の「総主教」とは異なる役割と権限を持ちます。正教会における総主教は各教区の指導者であり、ローマ教皇はカトリック教会全体の最高指導者です。このように、宗教的立場の違いがあるため、両者の役職には相違点が多く見受けられます。

総主教の役割は、正教会やその信徒にとって極めて重要であり、歴史的及び神学的な意義を持つことを理解することができます。

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