アントニオ・ナリーニョ

アントニオ・ナリーニョ：コロンビア独立の先駆者

アントニオ・ナリーニョ（Antonio Amador José de Nariño y Álvarez del Casal）は、コロンビア独立運動における中心的な人物の一人です。南アメリカ独立戦争の時代に、その卓越したリーダーシップと革命思想で名を馳せました。

生い立ちと啓蒙思想との出会い

1765年、アントニオ・ナリーニョはボゴタの裕福な貴族の家庭に生まれました。父親は植民地政府の財務官僚であり、彼は幼い頃から豊富な書籍に囲まれて育ちました。1785年に結婚し、6人の子供をもうけました。教会会計の仕事に従事する傍ら、政府から許可を得て印刷所を経営していました。

ナリーニョは、アメリカ独立戦争とフランス革命の動向に強い関心を抱いていました。ボゴタの秘密政治集会に出入りし、同じ志を持つ人々との交流を深めました。1794年、彼はフランス政府が配布した「人間と市民の権利の宣言」を入手し、スペイン語に翻訳しました。そして、自身の印刷機で印刷し、同志たちに配布しました。この文書は他の印刷所でも複製され、南米各地に広まりました。

弾圧と不屈の精神

「人間と市民の権利の宣言」は、当時のスペイン植民地では禁制品でした。植民地政府は発見次第、この文書を焼却しましたが、独立運動への影響は甚大でした。ナリーニョは逮捕され、アフリカの刑務所に送られました。獄中で結核に感染し、一時的に釈放されるも、再び逮捕されました。1810年、故郷のボゴタに戻りました。

スペイン本国が半島戦争で混乱する中、ボゴタでは独立派の勢いが拡大していました。独立派はボゴタ県の独立を宣言し、王党派は南部に逃れました。1811年、ナリーニョはボゴタ知事に任命され、周囲の勧めもあって軍を率いて王党派の掃討作戦を指揮しました。しかし、彼は南部のパストで捕らえられ、スペインの刑務所に送還されました。

コロンビア独立と晩年

1819年、シモン・ボリバルの軍がボヤカの戦いで勝利し、コロンビアの独立が達成されました。1821年、ナリーニョは釈放され、ボゴタに帰還しました。長年の獄中生活で健康を害しており、引退を決意しました。ボゴタよりも温暖で静かな田舎町、ビジャ・デ・レイバに移住し、1823年に58歳で生涯を閉じました。

アントニオ・ナリーニョの功績は、今日のコロンビアにおいて高く評価されています。彼の革命精神と不屈の意志は、コロンビア独立の礎となり、南米の自由と独立を求める人々に勇気を与えました。

関連事項

ナリーニョ県
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