アントワーヌ・ギゼンガ

アントワーヌ・ギゼンガ：コンゴ民主共和国の政治家

アントワーヌ・ギゼンガ（Antoine Gizenga、1925年10月5日 - 2019年2月24日）は、コンゴ民主共和国の政治家であり、2006年12月30日から2008年10月10日まで同国の首相を務めました。彼はコンゴ動乱の時代に、パトリス・ルムンバ派の重要なリーダーとして活動しました。

生い立ちと政治参加

1950年代、ギゼンガはパトリス・ルムンバが率いるコンゴ国民運動に参加し、党の幹部として頭角を現しました。1960年のコンゴ独立後には副首相に就任しますが、間もなくジョセフ・カサブブ大統領とルムンバ首相との間で政治的対立が激化します。同年9月14日、モブツ・セセ・セコのクーデターによりルムンバが拘束されると、ギゼンガをはじめとするルムンバ派は、彼らの地盤であったスタンレーヴィル（現在のキサンガニ）に拠点を移し、12月12日に新たな政府を樹立しました。ギゼンガは首相に就任し、ルムンバの復帰を待ち望む体制を整えました。

ルムンバ暗殺後の政局とギゼンガの失脚

1961年1月、ギゼンガ政権は反モイーズ・チョンベ派の「北部カタンガ共和国」を吸収する形で勢力を拡大しようとしましたが、その直後の1月17日にルムンバが暗殺されるという悲劇に見舞われます。同年2月21日には、国連がギゼンガ政権を支持する声明を発表したものの、カサブブ大統領の呼びかけに応じて、7月16日にカタンガ派以外の勢力を結集したアドウラ政権に参加することとなり、ギゼンガは首相の座を降りました。

投獄と亡命

その後、ギゼンガは1962年から1965年までの期間を投獄され、1965年から1992年までの長期間にわたり亡命生活を余儀なくされました。この間、コンゴの政情は大きく変化し、ギゼンガの政治的立場も複雑なものとなっていきました。

民主化後の首相再任と辞任

2006年7月、コンゴで初めて行われた民主的な選挙に、81歳という高齢でギゼンガはPALU（統一ルムンバ主義党）を率いて出馬しました。彼の支持基盤は旧ルムンバ派であり、ジョセフ・カビラ、ジャンピエール・ベンバに次ぐ第3位の票を獲得しました。決選投票ではカビラ支持に回り、カビラの勝利に貢献。その功績が認められ、2006年12月30日にはカビラによって首相に任命されました。しかし、国軍改革の失敗からカビラとの対立が深まり、2008年10月10日に首相を辞任しました。

死去

2019年2月24日、アントワーヌ・ギゼンガはキンシャサにて93歳でその生涯を閉じました。彼の死は、コンゴ現代政治史における一つの時代の終わりを象徴するものとして、国内外で報じられました。

アントワーヌ・ギゼンガは、コンゴ民主共和国の激動の歴史を象徴する人物であり、独立、動乱、そして民主化という変遷の中で、常に政治の表舞台で活躍しました。彼の生涯は、コンゴの政治史を語る上で欠かすことのできない重要な一部分です。

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