モブツ・セセ・セコ

モブツ・セセ・セコ：ザイールの独裁者

モブツ・セセ・セコ・クク・ンベンドゥ・ワ・ザ・バンガ（1930年10月14日 - 1997年9月7日）は、ザイール（現コンゴ民主共和国）の軍人であり、政治家でした。1965年から1997年まで同国の大統領を務め、その間、強権的な支配体制を築きました。彼の生涯は、コンゴの独立、冷戦、そしてアフリカの政治的変動と深く関わっています。

生い立ちと初期のキャリア

モブツは、ベルギー領コンゴのリサラで、ンバンディ族の家庭に生まれました。当初の名前はジョゼフ＝デジレ・モブツ。学校を退学後、軍隊に入り、その後ジャーナリストとして活動しました。この時期に、後のコンゴ初代首相となるパトリス・ルムンバと出会い、政治の世界へ足を踏み入れます。

コンゴ動乱と権力掌握

1960年、コンゴがベルギーから独立すると、モブツはルムンバ首相の下で軍の要職に就きます。しかし、独立直後から国内は混乱し、モブツはクーデターによって実権を掌握します。その後、大統領と手を結び、ルムンバを逮捕。この行動は、アメリカとの関係を深めるきっかけとなりました。

大統領としての一党独裁

1965年、モブツは再びクーデターを起こし、大統領に就任。憲法を停止し、野党を非合法化して、革命人民運動（MPR）による一党独裁体制を確立しました。反対勢力は弾圧され、資源ナショナリズム政策が推し進められました。

冷戦下の支援と不正蓄財

冷戦時代、モブツは親米反共の立場を取り、西側諸国からの援助を受けました。しかし、その資金は国民に還元されず、モブツ自身が巨額の不正蓄財を行ったとされています。その額は50億ドルに達するとも言われ、国内外に豪華な邸宅を所有していました。「モブツの個人資産は、ザイールの対外債務に等しい」と揶揄されるほどでした。

ザイール化政策と文化統制

1971年、モブツは国名を「コンゴ」から「ザイール」に改称し、首都名も変更するなど、民族主義的な「ザイール化政策」を推進しました。自身の名前も改名し、西洋的な服装を禁止するなど、文化的な統制も行いました。一方で、中国からの援助を受け、キンシャサ人民宮殿や国立競技場などの建設を行いました。

内戦と失脚

1990年代に入ると、ザイール国内の民族対立が激化し、モブツの政権は不安定化します。1996年には、ローラン・カビラ率いる反政府勢力が蜂起し、ザイール全土を制圧。1997年、モブツは国外へ亡命し、その年のうちにモロッコで死去しました。

遺産

全体主義、権威主義、そして民族主義を組み合わせたモブツの思想は「モブツ主義」と呼ばれました。その評価は分かれていますが、今日のコンゴでも、彼の息子が率いる政党が一定の支持を集めています。モブツの統治は、コンゴの歴史において大きな影を落としており、その遺産は複雑なものとして残っています。

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