アントン・オリバー

概要

アントン・デイヴィッド・オリバー（Anton David Oliver）は、1975年 9月9日にニュージーランドで生まれた、かつて同国を代表するラグビーユニオン選手でした。主にフッカーのポジションで活躍し、ニュージーランド代表「オールブラックス」の一員として国際舞台で名を馳せました。現役引退後は、異色のキャリアチェンジを果たした人物としても知られています。

幼少期と学生時代

オリバーはインバーカーギルで生まれ育ちました。マルボロ・ボーイズカレッジを経て、オタゴ大学へと進学。大学時代には、後のオールブラックスのチームメイトとなるトニー・ブラウンやサイモン・メイリングらと共に学生生活を送り、ラグビーに打ち込みました。早くからその才能を認められ、ニュージーランド高等学校代表、U-19、U-21といった各年代別代表を経験し、将来を嘱望される存在となります。

国内・地域でのキャリア

国内の代表チームであるNPCでは、マルボロ（現在はタスマンに統合）を経て、オタゴに所属。特にオタゴでは長きにわたりチームの要としてプレーし、85キャップを積み上げました。また、スーパーラグビーでは、1996年から2007年までの12シーズンにわたり、ハイランダーズ一筋でプレー。その間に出場した試合は127キャップを数え、チームのレジェンドとしてファンに愛されました。

オールブラックスでの栄光と苦難

1996年、満を持してラグビーニュージーランド代表「オールブラックス」に初選出されました。国際試合へのデビューは1997年6月14日のフィジー代表戦です。伝説的なフッカー、ショーン・フィッツパトリックが代表から退いた後を継ぐ形で、ナショナルチームの正フッカーのポジションを担うことになります。オールブラックスとして生涯で59回のキャップを獲得し、3トライを挙げて15得点を記録しました。

キャリアのハイライトの一つは、2001年にオールブラックスのキャプテンに任命されたことです。主将としてチームを率いた試合数は10を数えます。特筆すべきは、彼の父フランク・オリバーもかつてオールブラックスのキャプテンを務めていたことであり、ラグビー王国ニュージーランド史上初となる「親子二代でのオールブラックスキャプテン」という歴史的な快挙を達成しました。

しかし、そのリーダーシップを巡っては賛否両論が巻き起こり、当時のヘッドコーチであったジョン・ミッチェルのもとでは、一時的に代表のスコッドから外れるという苦難も味わいました。さらに、2002年には怪我に見舞われ、戦列を離れる時期もありました。それでも不屈の精神で、2003年以降は再び代表に復帰。主要大会にも出場し、2007年にオールブラックスとしての活動に終止符を打ちました。

現役引退、そして第二の人生へ

オールブラックス引退後、2007-2008年シーズンはフランスのラグビーリーグ、トップ14に属するRCトゥーロンへ活躍の場を移しました。この2008年シーズンを最後に、プロラグビー選手としての現役生活から完全に引退することを表明します。

スパイクを脱いだ後、オリバーはイングランドへと移り、学問の世界に身を投じました。世界屈指の名門であるオックスフォード大学ウォスターカレッジへ進学し、理学修士号の取得を志します。学生となった彼は、引退後もラグビーとの縁が切れず、2008年にはオックスフォード大学の学生選手として、伝統の一戦であるザ・バーシティマッチ（対ケンブリッジ大学定期戦）に出場するという珍しい経験も果たしました。

オックスフォード大学での課程を修了し、生物多様性科学専攻で理学修士の学位を得た後、オリバーはビジネス界へと転身します。2010年8月からはロンドンにあるリスク分析会社に入社し、営業部長のポストに就きました。彼はオタゴ大学で商学士（金融専攻）と体育学士（体育学専攻）の学位を取得しており、加えてオックスフォード大学での理学修士と、多岐にわたる分野で高い学識を持つ人物です。この幅広い知見を活かし、現在はビジネスの第一線で活躍しています。

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