インバーカーギル

インバーカーギル：ニュージーランド最南端の都市

インバーカーギル（Invercargill）は、ニュージーランド南島のサウスランド地方に位置する、国内最南端の都市です。マオリ語ではワイホパイ（Waihopai）と呼ばれ、2020年の人口は約5万7100人を数えます。その歴史は、スコットランドからの入植者たちによって築かれました。

スコットランド移民による開拓

1848年、スコットランドからダニーデンに入植した長老派自由教会の信者たちが土地を購入し、牧畜を始めました。これがインバーカーギルの開拓の始まりです。その後、亜麻紡績工場が設立され、1858年にはオーストラリアから家畜を輸入するために、当時のニュージーランド総督であったトーマス・ブラウンに港の設置を陳情しました。ブラウンはこれを了承し、入植地に「インバーカーギル」という名前を与えました。

「インバー（Inver）」はスコットランド・ゲール語の「inbhir」に由来し、「河口」を意味します。「カーギル（Cargill）」は、当時のオタゴ警視であったウィリアム・カーギル名誉艦長にちなんで名付けられました。現在でも、スコットランド訛りで「インバカーゴ」と呼ばれることがあります。

ゴールドラッシュと繁栄

1860年代にはゴールドラッシュが起こり、人口が急増しましたが、10年ほどで終息しました。しかし、このゴールドラッシュによって得た経済的な繁栄は、ダニーデンと同様に、市内各所に建設されたヴィクトリア朝建築やエドワード朝建築として今も残っています。

1861年にはオタゴ州から独立し、1861年から1870年までサウスランド州の州都でしたが、財政難からオタゴ州に再編されました。1867年には、ブルーフからインバーカーギルまでの約27キロメートル区間で鉄道が開通しました。

1890年代後半から1900年代初頭にかけては、農業・酪農が盛んになり、乳製品加工工場や冷凍食肉加工工場などが設立され、1891年から1916年の間に人口は約2倍に増加しました。現在では、サウスランド地方最大の町として発展しています。

気候と自然

インバーカーギルは西岸海洋性気候に属し、夏季（2月）の平均気温は18.8℃、冬季（8月）の平均気温は11℃です。年間平均降水量は1112mmで、年間日照時間は1580時間と、ニュージーランドで最も曇り空の多い地域です。しかし、夏季の至点の頃には、1日の平均可照時間が16時間に達します。

交通の要衝

インバーカーギルは、ニュージーランド・ステートハイウェイネットワークの最南端に位置し、フィヨルドランド国立公園などへのアクセス拠点となっています。国道1号線を利用して、ダニーデンをはじめとする南島の各都市へ移動できます。インバーカーギル空港からは、クライストチャーチ国際空港、ウェリントン国際空港、スチュアート島への航空路線が就航しています。また、クライストチャーチ、ダニーデン、クイーンズタウンなどからの高速バスも運行されています。

国際交流

インバーカーギルは、日本の埼玉県熊谷市（1993年 - ）と、中国の江蘇省宿遷市（2013年 - ）と姉妹都市提携を結んでいます。かつては、オーストラリアのタスマニア州ホバートとも姉妹都市でした。

インバーカーギルは、その豊かな歴史と自然、そして交通の要衝としての役割から、ニュージーランド南島を訪れる人々にとって魅力的な都市です。

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