アンドロメダを救うペルセウス (ピエロ・ディ・コジモ)

アンドロメダを救うペルセウス：ピエロ・ディ・コジモの傑作

ピエロ・ディ・コジモによる「アンドロメダを救うペルセウス」は、1510年から1515年頃に制作されたテンペラ画です。この作品は、ギリシャ神話における英雄ペルセウスとアンドロメダの物語を鮮やかに描き出しており、ルネサンス期のイタリア絵画における重要な作品の一つとして、フィレンツェのウフィツィ美術館に所蔵されています。

神話に基づく物語

絵画の主題は、オウィディウスの『変身物語』に記されているペルセウスとアンドロメダの物語です。メドゥーサの首を手に入れたペルセウスは、空を飛んでエチオピアの海岸に到着します。そこで、彼は海の怪物に生贄として捧げられようとしているアンドロメダ姫を目撃します。アンドロメダの母カッシオペイアが海の女神ネレイスの美しさを侮辱したため、海神ポセイドンが怪物によってエチオピアを荒廃させていたのです。ペルセウスは、勇猛果敢に怪物と戦い、メドゥーサの首の力を用いて怪物退治に成功し、アンドロメダを救い出します。そして、二人は結婚することになります。

絵画の構成と技法

ピエロ・ディ・コジモは、物語の複数の場面を一つの画面に同時的に描き出す、異時同図法という手法を用いています。画面左には、怪物に襲われそうになっているアンドロメダと、絶望する宮廷の人々が描かれ、画面右上には空を飛ぶペルセウスの姿が描かれています。そして画面の中央には、ペルセウスが怪物と対峙し、止めの一撃を放とうとしている場面が描かれ、画面右下には怪物退治後、ペルセウスとアンドロメダが人々から祝福される場面が描かれています。

この作品の特徴として、細部への精緻な描写が挙げられます。人物の衣装や背景の風景は、非常にリアルに描かれており、レオナルド・ダ・ヴィンチのスフマート技法やフランドル派の影響が感じられます。また、空想的な楽器を演奏する楽人や、オリエンタルな衣装をまとった人々の描写も、この絵画に独特の雰囲気を与えています。画面右端には、画家の自画像と考えられる人物も描かれています。

制作経緯と来歴

ジョルジョ・ヴァザーリによると、この作品はフィリッポ・ストロッツィからの依頼によって制作されたとされています。当時、フィレンツェでメディチ家と権力闘争を繰り広げていたストロッツィ家のために制作されたこの絵画は、後にメディチ家のコレクションに加わり、ウフィツィ宮殿のトリブーナに展示されるようになりました。

「アンドロメダを救うペルセウス」は、その高い芸術性と歴史的な価値から、現在もウフィツィ美術館の重要なコレクションとして大切に保存されており、世界中の人々を魅了し続けている名画です。その繊細な筆致、鮮やかな色彩、そしてドラマチックな物語は、見る者に深い感動を与え、ルネサンス期のイタリア絵画の輝きを伝えるものです。

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