アンバサダー橋

アンバサダー橋は、アメリカ合衆国ミシガン州デトロイトとカナダオンタリオ州ウィンザーを結ぶ、デトロイト川に架かる象徴的な吊橋です。この橋は、アメリカとカナダの国境を越える交通において最も重要な役割を果たしており、両国間の経済活動を支える大動脈となっています。

全長2286メートルを誇るアンバサダー橋は、1929年に完成しました。完成当時、世界最長の吊橋であり、その技術力と規模は当時の人々を驚かせました。現在では、デトロイト・ウィンザートンネルも両都市を結んでいますが、アンバサダー橋は依然として重要な交通インフラとしての役割を担っています。

この橋の特筆すべき点は、1979年に大富豪マニュエル・モラウン氏によって買収され、個人所有となっていることです。アメリカ側ではデトロイト国際橋梁会社、カナダ側ではカナダ交通会社を通じて所有されており、この個人所有の形態が、橋の運営に独特の影響を与えています。

アンバサダー橋は、大型トラックや二輪車の通行が禁止されているデトロイト・ウィンザートンネルとは異なり、これらの車両の通行を許可しています。これにより、モラウン氏は商用トラック輸送の通行料収入を事実上独占しており、さらに免税ガソリンの販売からも大きな利益を得ています。この状況は、アメリカとカナダの政府が、新たな橋を建設する必要性を認識するに至る背景となりました。

両国政府は、アンバサダー橋の独占状態を解消し、より効率的な交通インフラを整備するために、新たな橋の建設を計画しました。この計画は、下流に新たな橋を建設するもので、2012年5月にはカナダ政府が資金提供に合意しました。新しい橋は、デトロイト・レッドウィングスで活躍した伝説的なアイスホッケー選手、ゴーディ・ハウ氏にちなんで、「ゴーディ・ハウインターナショナルブリッジ」と命名され、2018年に建設が開始され、2025年の完成を目指しています。

しかし、この新しい橋の建設は、既存のアンバサダー橋の所有者であるモラウン氏にとって、収入の減少を意味します。そのため、モラウン氏は訴訟やテレビCMによるネガティブキャンペーンを展開し、建設プロジェクトに激しく反対しています。彼の反対活動は、橋の建設を巡る複雑な政治的・経済的な背景を浮き彫りにしています。

アンバサダー橋は、単なる橋以上の存在であり、アメリカとカナダの国境を象徴する歴史的な建造物です。その所有権、そして新たな橋の建設を巡る争いは、両国間の経済と政治の複雑な関係を物語っています。


外部リンク

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Ambassador Bridge facts, dimensions, and so on at Web.Archive.Org
* Ambassador Bridge Detailed statistics at Web.Archive.Org

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