アンブラックメタル

アンブラックメタル (Christian Black Metal)

アンブラックメタル、またの名をクリスチャン・ブラックメタルは、ブラックメタルの音楽的スタイルを採用しつつ、その歌詞やアートワークにおいてキリスト教を賛美する独特なジャンルです。この音楽スタイルは、反キリスト的な立場を取ることが一般的なブラックメタルシーンの中で、物議を醸してきました。キリスト教の理念と相反するブラックメタルの特徴、例えば邪悪さや個人主義的・人間不信的な思想が共存できるのかという点についての議論は、今も続いています。

概要

アンブラックメタルの正確な始まりを示す時期については意見が分かれていますが、1994年にオーストラリアのバンドHordeがリリースしたアルバム『Hellig Usvart』がこのジャンルの先駆けとされています。このアルバムは、メディアの注目を集め、ジャンル名である「ホーリー・アンブラックメタル」という用語が広まりました。この名前は、ブラックメタルバンドであるダークスローンのスローガン「アンホーリー・ブラックメタル」をもじったものでした。一方で、ノルウェーのバンドAntestorは1990年の結成以来、早くも1991年にアルバム『The Defeat of Satan』をリリースしています。しかし、彼らは1994年に発表されたアルバム『Martyrium』で音楽スタイルをブラックメタルにシフトさせることになります。

アンブラックメタルは、ブラックメタルシーン内でキリスト教を肯定的に表現するバンド群と見なされており、楽曲のスタイルは典型的なブラックメタルの特徴を持っています。スピード感あふれるテンポ、叫び声を織り交ぜたボーカル、高音域を強調したディストーションギター、ツーバスを用いたドラムに、通常とは異なる構成が見られます。

さらに、一部のアンブラックメタルバンドは、サタニズムを批判する内容の歌詞を持っている場合もあり、Hordeがその代表的な存在です。1990年代中期になると、改宗や救済、信仰の戦いなど、より深い哲学的・イデオロギー的な内容をテーマにした楽曲が増加し、聖書の引用も多く含まれるようになりました。これらのバンドがブラックメタルを演奏する背景には、音楽のスタイルとしての評価から、ブラックメタル界にキリスト教的なメッセージを伝えようとする意図があるのです。

歴史

1990年代初頭に登場したアンブラックメタルは、オーストラリアのバンドHordeが発表した『Hellig Usvart』で初めて広く認識されました。これに対し、バンドのメンバーAnonymousは他の先行バンドの存在を指摘し、ノルウェーのAntestorについても言及しています。Antestorは、もともとはデスドゥームバンドのCrush Evilとして活動しており、1994年には『Martyrium』としてアンブラックメタルにシフトしましたが、公式なリリースは2000年まで行われませんでした。

また、『Hellig Usvart』はブラックメタルの世界で激しい論争を引き起こします。Nuclear Blast Recordsには脅迫文が送りつけられ、メンバーの名が公表されなかったため、メディアは興味を持ちました。1995年6月6日、ノルウェーの週刊紙モルゲンブラーデにおいて、Hordeのアルバムがブラックメタル・ムーヴメントに対する風刺であるとの記事が掲載されました。Antestorもインタビューを受け、彼らは自身の音楽スタイルを「ブラックメタル」と定義しています。

続いて、スウェーデンではバンドAdmonishが1994年に結成され、自らの音楽を「クリスチャン・ブラックメタル」と表現しました。このことも、アンデグラウンドシーンにおける議論を呼び起こしました。

論争

キリスト教かどうかでブラックメタルバンドを区別するのは無意味だという意見もありますが、初期のバンドは自らの音楽を

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