アンブロジアーナ図書館

アンブロジアーナ図書館：知の宝庫と芸術の殿堂

アンブロジアーナ図書館は、イタリア・ミラノに位置する歴史的な図書館です。1607年、枢機卿フェデリーコ・ボッローメオによって設立され、その扉は1609年に一般公開されました。この図書館は、単なる書籍の保管場所ではなく、知識、芸術、そして歴史が融合した場所として、その名を世界に知られています。

開館当初から、アンブロジアーナ図書館は西洋における主要な公開図書館の一つとして、その地位を確立しました。オックスフォード大学のボドリーアン図書館（1602年公開）やローマのアンジェリカ図書館（1604年公開）に次いで、西洋史上3番目に公開された図書館であるとされています。

歴史的背景

枢機卿ボッローメオは、プロテスタントの宗教改革の進行を食い止めるため、カトリックの起源と伝統に関する資料収集と研究を目的として、この図書館を設立しました。彼はヨーロッパ全土および東方諸国に密使を派遣し、手稿や写本を集めさせました。その結果、ボッビオ修道院の蔵書や愛書家ジャン･ヴィンチェンツォ・ピネッリの蔵書など、貴重なコレクションが図書館に収められました。

図書館の建設は1603年に始まり、1609年12月8日に閲覧室が開設されました。当時としては珍しく、書籍は鎖で繋がれることなく、読み終わった後に壁面の棚に戻すというスタイルが採用されました。また、図書館には印刷所やラテン語・ギリシャ語の研究施設も併設されました。

拡大と変遷

その後も図書館は、収集と寄贈を通じて規模を拡大し続けました。その結果、建物が手狭になり、拡張の必要に迫られました。枢機卿ボッローメオは、絵画を所蔵する施設と美術院（アッカデーミア）の設立も計画し、1611年に工事が開始されました。1618年には、自身が所蔵していた絵画やデッサンを寄贈し、これがアンブロジアーナ絵画館の核となりました。アッカデーミアは1625年に開設され、ジョヴァンニ・バッティスタ・クレスピなどが初期の教師として教鞭を執りました。

1631年にボッローメオ卿が亡くなった後も、収集と寄贈は継続され、ダ・ヴィンチの『アトランティコ手稿』やルーベンスのデッサンなど、多くの貴重な資料がコレクションに加えられました。しかし、ミラノがフランスの支配下にあった時期には、所蔵品の一部が徴収されるという苦難も経験しました。『アトランティコ手稿』は後に返還されましたが、未返還の資料も残っています。

第二次世界大戦中の1943年には、爆撃によって建物と所蔵品が重大な被害を受けました。特に、スカラ座のオペラ台本コレクションは完全に失われました。1952年になってようやく復旧工事が始まり、建物は1990年から1997年にかけて新しく建て直されました。

アンブロジアーナ絵画館

アンブロジアーナ図書館に併設されているアンブロジアーナ絵画館は、その貴重なコレクションで知られています。レオナルド・ダ・ヴィンチの『音楽家の肖像』やカラヴァッジョの『果物籠』など、ルネサンス期からバロック期にかけての傑作を数多く所蔵しています。これらの作品は、単に芸術的な価値を持つだけでなく、当時の文化や社会を理解するための重要な資料としても価値が高いと言えるでしょう。

まとめ

アンブロジアーナ図書館は、単なる歴史的な図書館以上の存在です。設立者の情熱と知への探求心、そして数々の苦難を乗り越えてきた歴史は、私たちに大きな感動を与えてくれます。その貴重なコレクションは、過去の遺産であると同時に、未来への扉を開く鍵となるでしょう。図書館は、知識の泉であり、創造の源泉であり、そして文化の架け橋となる場所として、これからもその輝きを失うことはないでしょう。

参考

* Veneranda Biblioteca Ambrosiana - Sito web ufficiale

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